目指せ来春の営農再開 大量発注へ各機関が横断的に連携を
未曽有の被害が生じた北海道胆振東部地震発生から間もなく2カ月。胆振、日高管内では震源に近く震度7を記録した厚真をはじめ、安平、むかわ3町の被害は大きく、各地では地元建設業者や測量業者などが住民の日常生活を取り戻す復旧・復興に動いている。室蘭開建や室蘭建管などの発注機関をはじめ、陣頭に立つ室蘭建設業協会の中田孔幸会長らに、本復旧に向けた取り組みと課題を聞いた。(苫小牧支社・乙部真貴子記者、室蘭支局・高橋秀一朗記者)
知恵出し一日も早く
厚真町では、土砂災害で36人の命が失われ、約1100人の町民が避難所生活を余儀なくされた。町は復旧や復興に向けて国、道との調整役として横断的に取り組む災害復興グループを新たに設け、対応している。
宮坂尚市朗町長は、救助や道路など応急復旧に対応した国や道の関係機関に感謝を表すとともに、「インフラ整備などスピード感を持った復旧、復興に向けて最善を尽くしたい」と意気込む。
「災害復旧、さらにその先の復興、この3年間は相当な事業量で、技術的にも難易度が高い事業になる」と言い切る。それだけに「地元を良く知る者に活躍してもらい、お互い知恵を出し合い協力しながら一日も早く復旧作業を進めたい」と述べた。
被災した地域の復興計画や再編計画などに取り組むとともに、「来春に営農ができる用意をすること。それが町民にとって立ち上がる原動力になる」と強調する。
生きた「有珠山」経験
一方、室蘭開建の米津仁司部長は、今回の災害発生時、迅速に各首長とホットラインを築き、室蘭建設業協会と連携して緊急復旧体制を整えた。2000年に起きた有珠山噴火などの震災対応経験を生かした行動だった。
北海道開発局は5日に復興・強靱化推進本部を設置した。米津部長は「3町の復興に向けた広域連携のバックアップを進めたい」と協力体制の構築に意欲を示す。
直轄事業では、主に農業基盤施設の被害が大きい。厚幌導水路の復旧、日高幌内川での緊急砂防は「補正や災害復旧措置による予算を見ながら確実に推進する」と話す。
工程や安全にも注意
所管施設が甚大な被害を受けた室蘭建管。泉智夫事業室長は「震災直後は建協、測量コンサルタント業者などが緊急復旧に駆け付けてくれ、土砂啓開では自衛隊、国土交通省の重機手配に助けられた」と感謝。本復旧に向けては「相当な発注量となり、年度内発注が出るだろう。復旧工事を受注できる企業がどの程度あるか把握しなければ」と語る。
一方で護岸用のコンクリートブロックなど資材不足への懸念や、今後復旧工事が混雑することへの不安を抱える。崩れた土砂が道路をまたいで畑地に流出した現場では、林務、道路、農業の各担当部署での発注工事がほぼ同時に進むため、工程管理や安全管理などへの注意が欠かせない。
各関係機関は、地震前のにぎわいを取り戻そうと、連携してインフラの復旧を後押しするとともに、その先の復興を見据えている。