年の瀬に株価急落

2018年12月27日 07時00分

 国際金融市場の中心だったころの英国に留学していた影響もあるのだろう。夏目漱石は投資に積極的だった。1916(大正5)年に亡くなったとき、遺産のほとんどは株式だったくらいである

 ▼『吾輩は猫である』では登場人物にこんなことを言わせていた。「奥さん小遣銭で外濠線の株を少し買いなさらんか、今から三四個月すると倍になります。ほんに少し金さえあれば、すぐ二倍にでも三倍にでもなります」。2倍、3倍とはいかないまでも、ここ数年の日本の株式市場もずいぶんと投資家の懐を温めてきたのでないか。それが年の瀬も押し迫ったこの時期に驚くほどの急落である。25日には1年3か月ぶりに日経平均株価が2万円割れ。きのうは終値で若干戻したものの、1万8948円の年初来安値も更新した

 ▼漱石も存命なら多くの投資家と同様、やきもきしながら成り行きを見詰めていたに違いない。ことし10月には2万4000円を超えていた株価である。相当な含み損を抱えた投資家もいよう。株安の原因はトランプ米大統領の政権運営にあるらしい。メキシコ国境の壁建設予算が議会で通らず一部政府機関が閉鎖されたり、中国との貿易戦争が長引いたり。先行き不透明感から金融界に不安が広がっているのだとか。米国がくしゃみをすれば日本が風邪をひくグローバルなご時世である

 ▼以前読んだサラリーマン川柳(第一生命)を思い出す。「株下がり持たぬ男が株を上げ」。そんな憎まれ口をたたきたくなる気持ちも分かる。さて皮肉屋の漱石ならこの事態、一体どう表現したろうか。


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