トムラウシ山大量遭難

2019年07月18日 09時00分

 ことしの5月、久々に春山で雪渓歩きをしたいと思い、芦別岳に登ってきた。頂上へ向かうには新道、旧道、本谷の3コースがあるが、当日は単独行のため最も難易度の低い新道を選んだ

 ▼易しいとはいえ急峻な芦別岳。頂上直下は雪の急斜面が続き、滑落すれば最悪命を落とす危険もある。それだけに準備は入念だ。登山靴を手入れし、簡易アイゼンは新調した。山特有の天候急変に備え、防水防寒装備も携行する。何より大切なのはどうなったら登山を中止するのか事前に決めておくことだ。人には前に進みたい欲求があるため、成り行き任せで頑張りすぎると引き返せない所まで行ってしまう。パーティーならリーダーの資質が試される場面でもある
 ▼それらがことごとく欠けていたのは残念というほかない。大雪山系のトムラウシ山で縦走ツアーを楽しんでいた登山客ら8人が死亡した2009年の遭難事故から10年が過ぎた。皆さん山をこよなく愛する方々だったろう。あらためてご冥福をお祈りしたい。遭難の原因は体力の低下が低体温症を招いたこと。悪天候を突いて無理に行動したのが災いした。7月にしては気温が低く、風雨も激しかったという

 ▼筆者も4回、トムラウシ山に登ったことがある。9月にトムラウシ温泉から入ったとき、予報は晴れなのに上で猛吹雪に襲われた。ちょうど先の事故が起こった辺りである。吹きっさらしで身を隠す場所はほとんどない。われわれは頂上を諦め、冬装備に身を固めて真っすぐ避難小屋へ向かった。山では欲求に反する決定が時に命を守るのである。


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