iPS研究継続の危機

2019年11月22日 09時00分

 財務大臣として2015年のギリシャ経済危機を乗り切った経済学者ヤニス・バルファキス氏が著書『父が娘に語る経済の話。』(ダイヤモンド社)で愚かな経営者と賢い経営者の違いに触れていた

 ▼「労働組合の全国組織が賃金の2割カットを受け入れた」とのニュースを見たときの反応の差である。「いいことを聞いた。うちの会社も便乗して賃金をカットし、コストを減らそう」と大喜びするのが愚かな経営者。一方、「コスト削減も大切だが、これでは働く人が生活必需品まで買えなくなってしまうのでは」と心配するのが賢い経営者だという。消費が弱まれば経済は停滞する。長い目で見ると会社にとって良くない結果を招きかねない。その観点があるかどうかが分かれ目である

 ▼経営者ではないが、政府もこれに関しては愚かさを露呈しているようにしか見えない。拒絶反応の少ない再生医療を目指し研究を続ける京大iPS細胞研究所への資金援助を、来年度からカットする方針を打ち出したそうだ。研究所が独自に寄付金を集めているのをいいことに、支援をやめようとの魂胆らしい。山中伸弥所長が全国を駆け回り、必死に集めた寄付金である。本来なら国の支援と寄付金で万全の研究環境を整え、世界に先駆けて実用化に道筋を付けるのがあるべき姿だろう

 ▼山中所長は先週、日本記者クラブで政府の決定過程の不透明さと理由の理不尽さに不満を表明し、支援継続と明確な説明を求めたという。財政負担軽減にばかり気を取られ、金の卵を産むガチョウを弱らせるのは賢いやり方ではない。


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