鉄路のこれから

2019年12月02日 09時00分

 子どものころによく聞いた歌はいつまでたっても不思議と忘れないものである。岡本敦郎さんの『高原列車は行く』(丘灯至夫作詞、古関裕而作曲)もその一つ。当方が生まれる前の歌謡曲だが、長く歌い継がれていたのだろう

 ▼こんな歌い出しだった。「汽車の窓から/ハンケチ振れば/牧場の乙女が/花束なげる/明るい青空/白樺林/山越え谷越えはるばると/ララララ…/高原列車は/ラララララ/行くよ」。牧場や白樺林が出てくるあたり本道の歌といわれても違和感はない。実は作詞した丘さんの故郷福島県がモデルという。いずれにせよ陽気な曲調とも相まって汽車旅の高揚感が伝わる歌である

 ▼そんな旅情をかきたてる鉄路が一つ、また一つと消えていく。先日も日高線鵡川―様似間の関係7町がJR北海道の提案する廃止案を受け入れ、バス転換に向けた協議に入る方針を決めた。災害で2015年から不通になっていたとはいえ、地元としては苦渋の決断だったろう。復旧を願っていたはずだ。企業なら不採算部門の見直しは避けられない。ただ廃止理由がそれだけでいいのか。技術者の長井士郎氏は『土木技術を未来へはしわたしする12のことば』(共同文化社)の中で「費用に対する効果の方に、単に収入だけでない『何か』を評価して」と記していた

 ▼観光や過疎地への貢献などの価値を認め補助する仕組みを作れば国民も納得するのでは、というのだ。維持困難線区はまだ幾つもある。「ラララララ」と思わず歌い出したくなる存続策を求め、今ほど知恵が試されているときはない。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • オノデラ
  • 川崎建設
  • web企画

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,634)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,471)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,112)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (961)
おとなの養生訓 第109回「うろ」 ホタテの〝肝臓...
2017年03月24日 (702)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。