峠の見張り

2020年02月04日 09時00分

 静岡県下田市に「銭瓶峠の追い剥ぎ」という伝説があるそうだ。明治初めころの出来事らしい。こんな話である 
 
 ▼峠にてんぐのような化け物が現れ、道行く人が身ぐるみ一式奪われる事件が相次いだ。南へ向かう近道として使っていた村人たちは遠回りを余儀なくされ大弱り。そこで村の世話役をしていた屈強な男が見張り役を買って出て、峠をつぶさに検分。追い剥ぎの出方を予測し、ついに捕らえることができた。強い責任感と勇気。その二つを共に備えた人物が見張り役の任に手を上げてくれなければ、峠は遠からず廃道となり、村人たちは不便をかこつことになったろう

 ▼こちらも事情は同じでないか。中東の海上交通路を航行する日本関係船舶の安全を確保するため、海上自衛隊護衛艦「たかなみ」が2日、横須賀基地を出港した。先月から派遣されているP3C哨戒機2機と連携しながら、情報収集や不審船の警戒に当たるという。危険な海域で見張り役を務める200人の隊員には頭が下がる思いだ。活動範囲は海賊や武装組織による商船襲撃が激しさを増す北アラビア海やオマーン湾。日本は原油輸入の90%を中東に頼っているため、年間4000隻近い日本関係船舶がこの海域を航行している。この「峠」を越せなくなればどうなるか。火を見るより明らかだ

 ▼タンカーの乗員は今この瞬間も危険と隣り合わせの航海を続けていよう。身を挺して日本の生活を支える彼らを放っておくわけにはいかない。自衛隊には精緻な調査と米軍との情報共有で、得意の抑止力を発揮してもらいたいものだ。


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