仲間と共に数々の危機を乗り越え成長する少年の姿を描いた『ハリーポッター』シリーズを映画や小説で子どもと一緒に楽しんだ人も多いに違いない。一話目の「賢者の石」にこんな場面があったのを覚えているだろうか
▼それは8月の最終日のこと。ハリーは次の日にキングスクロス駅へ行かねばならない。ただ、一人で行くには遠過ぎる。そこで居間に下り、バーノンおじさんに車で送ってほしいと頼むのである。なぜ駅に向かう必要があったかというと、ホグワーツ魔法学校行きの汽車に乗るため。ハリーは9月の新入学が決まっていたのである。日本人ならここは少し違和感のある部分かもしれない。日本は入学といえば4月だ。ところが欧米ではほとんどの国が9月なのである
▼日本もことしから9月に変えようとの声がにわかに高まってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で休校措置が長引いていることを踏まえ、この際前半はあきらめて、いっそのこと世界標準に合わせてしまおうという話らしい。全国知事会が4月29日のテレビ会議で国に検討を促す提言をまとめ、安倍首相も同日の衆院予算委員で選択肢として視野に入れる意向を表明した。歯車が今秋の入学に向け一気に回り出した感がある
▼行政の長たちのあまりに短兵急な進め方に、学校現場は青ざめていよう。内心のつぶやきが聞こえるようだ。「そんなことができるわけない」。もし実行するにしても数年掛けて計画的に進めるべき問題だろう。それとも全国の知事さんたちは、全ての懸案を一挙に片付ける魔法でもお持ちなのか。