脱炭素と電気自動車

2021年01月06日 09時00分

 子どもがまだ小さかったころ、足の踏み場もないほど自分の部屋を散らかしっ放しにしているためすぐに片付けるよう叱った。渋々掃除を始めたが、途中から勢いが付いたとみえて忙しげに物を動かす音が茶の間に響いてくる

 ▼1時間ほどして終わったというので点検に行くと、部屋は見事に片付いていた。喜んだのもつかの間、ふと隣のたんす部屋が目に入ってびっくり。物は全てそこに詰め込まれていたのである。何のことはない。乱雑な部屋がただ平行移動しただけ。プラスマイナスゼロというわけである。全く子どものすることは―と笑ってばかりもいられない。大人でも気がつかないうちに、似たような間違いをしている場合がある

 ▼カーボンニュートラルと車の電動化の関係もその一つだろう。菅首相は2050年に温室効果ガス排出を全体でゼロにする方針を打ち出している。実現のため期待をかけるのが電気自動車(EV)の普及だが、今のままではEVを作れば作るほど二酸化炭素が増えるのだ。日本の電力の中心が火力発電だからである。電動化によって車から排気ガスが出ない分、発電所からまとめて出るというわけ

 ▼日本自動車工業会会長を務める豊田章男トヨタ自動車社長が先月の記者会見でその点を指摘していた。脱炭素に全力で取り組むが、政府も増える需要をまかなえる電源開発を進めよとの主張である。再生可能エネルギーの不安定さを知りながら、原子力発電には及び腰の政府には耳の痛い言葉だろう。きれいな部分だけ政府が取り、厄介事は業界に、では子どもと一緒だ。


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