「シンボルビル」「複合観光施設」「みなと市場改修」今後10年視野
苫小牧市は、都市再生コンセプトプラン案をまとめた。市街地エリアとウォーターフロントエリアを連携させ、シンボリックな施設整備をすることで市民や観光客などの回遊性を生み出し、交流人口の増加を図る。今後10年を視野に入れて作成し、着手できる事業から進めていく考えだ。
空港と港湾のダブルポートを持つ苫小牧市が位置付ける、ものづくり産業のさらなる展開、臨海ゾーンにおけるロジスティクスの展開、臨空ゾーンにおける国際リゾートの展開―という成長戦略の方向性を示すもの。産業と環境が共生する持続可能な都市の実現を目指す。
プランでは①ウォーカブルなまちづくり②ウォーターフロントの魅力発信③次世代産業の展開④人材育成・多文化共生―の4点を促進要因としている。
具体的な取り組みを見ると、①では駅前から仮称・苫小牧市民ホール、ふるさと海岸までを一体的に整備し、歩いて回れるまちづくりによって交流人口の増加を目指す。市街地に多機能コミュニティー拠点やワーケーション・リモートワーク拠点の形成、カフェなど憩いの場整備を進め、親子3世代が楽しめるまちを創出。推進に当たっては、都市再生推進法人などの設立も検討する。
②では、西港北埠頭エリアで新しい空間をつくるため、海を眺望できる環境を生かした複合観光施設整備を検討。展望台や飲食、温浴施設、多目的スペースなどを有するシンボリックな建物をキラキラ公園内に整備することで誘客を促す。
また、漁港エリアでは、海の駅ぷらっとみなと市場の改修を実施し、地元住民や観光客が楽しめる市場の創出を目指す。促進要因①と②はイメージパースを示すことで、市民などに分かりやすくまちの展望を伝えている。パースは隈研吾建築都市設計事務所が作成した。
③ではカーボンニュートラル社会の実現に向けた産業振興や自然と共生したまちづくりの実現、MICE戦略、MaaSによる公共交通ネットワークの維持・強化を目指し、④では人材育成や国際交流推進による多文化共生の実現を図る。
市街地エリアにある苫小牧駅と仮称・苫小牧市民ホール、ぷらっとみなと市場、キラキラ公園の4つを主要な結節点と考え、市街地とウォーターフロントの両エリアが連携し、そこに市民のライフスタイルや時代を象徴する空間や建築を新築とリノベーションで生み出し回遊動線を確保する。
4つの結節点のうち苫小牧駅では、駅前にシンボルビルを新築し、駅前とまちをつなぐ施設とする。ビルには公共・商業施設、オフィス、コワーキングスペース、福祉ステーション、住居などを設ける考えだ。
工事費の試算では、中心市街地は建築が延べ床面積1万9000m²、96億7300万円、外構が1万5700m²、8億5600万円の計105億2900万円。ウォーターフロントは、建築が4400m²、26億9100万円、外構が1万2600m²、6億3000万円の計33億2100万円。事業費の捻出に関しては、民間事業者の参入なども見込んでいる。
2021年度の取り組みとしては、中心市街地機能などの検討や、魅力発信に向けたコンテンツづくり、再生可能エネルギー基本戦略づくり、中心市街地再生の方向性を固めることを目的としたT・O・P(苫小牧オープンプロジェクト)会議開催などを実施する計画だ。
(北海道建設新聞2021年3月13日付9面より)