東日本大震災のとき、何から何まで足りない不自由な避難生活を送る上で思わぬ物が役立ったという。それは赤ちゃんのお尻ふき。箱ティッシュのように1枚ずつ引き出して使う水分を含んだ不織布である
▼アベナオミさんの『被災ママに学ぶ ちいさな防災のアイディア40』(学研)に教えられた。安価だが適度な厚みがあり肌に優しい。水が貴重で満足に体も洗えないため、これを使って全身をふいていたそうだ。お尻ふきだから普段はそれ以外の用途に使おうとは思わない。ただし本来の機能を考えれば、別のことに使えるのも当然だった。要は気付いていなかっただけである。非常時にはどんなものでも活用していかねばならないという教訓だろう
▼チケット販売大手の「ぴあ」が自社のシステムを、ワクチン接種の予約業務に悩む自治体に提供する。こちらも分野こそ違えど、短期間に集中する大量の予約を的確にさばき、遅滞なく顧客にサービスを届けるノウハウを持つ。接種予約に活用できるわけだ。音楽やスポーツを見るため、「チケットぴあ」を利用した人も多いに違いない。このシステムは1回の予約受け付けに際し、同時に数10万件のアクセスに耐えられるのだとか。道理で「嵐」のライブチケット予約でもシステムが落ちないわけだ
▼「ぴあ」の狙いは早くコロナを終わらせイベント環境を整えることだが、願いは誰しも同じ。いわば今も非常時である。お役所仕事で右往左往している場合ではなかろう。お尻ふきのように役立つものがあるなら前例にとらわれず前向きに取り入れたい。