大坂なおみ選手が全仏を棄権

2021年06月02日 09時00分

 文豪夏目漱石は寛容な人で彼を慕う人がたくさんいたという。40歳のころには若手文学者や教え子が三々五々自宅に集まり、自由闊達(かったつ)に議論する木曜会なる場までできていたそうだ

 ▼ただ、はたからはそう見えなくとも、漱石本人は長く精神の病に苦しんでいた。極度に自分を追い込む性格だったのである。「この世に生れた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当がつかない」。そうこうしているうちに「私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ち竦んでしまったのです」。随筆『私の個人主義』(1914年)に記していた。漱石の精神の病は今ではうつ病だったと考えられている。一般の人が想像している以上につらい病のようだ

 ▼女子テニス世界ランク2位の大坂なおみ選手も、その病に苦しんでいたとは意外だった。類いまれな身体能力もさることながら、飾らない明るい性格と「なおみ節」とも呼ばれる個性的な発言で多くの人に愛されている。大坂選手は5月30日開幕の全仏オープン直前、心理的に負担として試合後の記者会見拒否を表明した。主催者側は規定破りだと反発。罰金を科した上、テニス4大大会からの追放もちらつかせた。プロ失格と批判した関係者も多い

 ▼1回戦を終えた大坂はツイッターを更新し、大会を棄権すると発表。加えて、「実は長い間うつ病に苦しんでいた」と告白したのである。勝利への執念と周りからの期待にとらわれ、自らを追い込んでいたのでないか。はたからは分からないものだ。つらかったろう。


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