ESG投資など評価 今後道内にも波及か
高さ50mを超す木造ビルが2025年にも、東京都心に誕生する。第一生命(東京)と清水建設(同)は京橋地区で、木造ハイブリッド賃貸オフィスビル(地上12階、延べ1万6000m²、高さ約56m)を新築する。無機質なオフィス街で異彩を放つ木目の外観パースと並び、特徴的なのが環境効果だ。木材利用により、同規模のS造物件に比べて建設時の二酸化炭素排出量が20%ほど減るという。
環境保護と建設・不動産投資が、ここに来て密接につながり始めた。その象徴とも言えるのが第一生命の動きだ。同社は契約者から預かった保険料の資産運用先として、古くから全国各地のオフィスビルなどに投資している。総額は約9000億円に達し、道内でも30物件程度を所有する。
20年4月に「ESG投資の基本方針」を公表。環境認証取得物件や木造建築物などESGに配慮した不動産への投資を積極化する考えで、所有物件の改築時にもこれらを選択肢に入れる。
脱炭素や森林循環など社会課題解決への寄与を目指して方針を定めたが、環境意識の高まりは同社に限った話ではない。投資家やデベロッパーの間では、同様の理由でESG関連物件が注目を集めている。他の保険会社や投資家からESG投資に関する手法や考え方など問い合わせがあったという。
不動産の環境認証に詳しい日本不動産研究所(東京)の古山英治次長は「中高層建築物木造化とESG投資の親和性は高い」と指摘する。首都圏のオフィスビルなどで投資家や入居企業から求められる環境認証を受けるには、利用者のリラックス効果など快適性が評価項目となるケースもある。これを踏まえ「木造化は、さまざまな加点対象になるだろう」とみている。
木造化の波は既に道内にも達している。三菱地所(東京)は札幌市中央区大通西1丁目で、国内初の高層ハイブリッド木造ホテル(地上11階、延べ6160m²)を新築。10月1日の開業を予定する。9階以上の高層階は床材を含めて純木造とし、8階の床材にCLT(直交集成板)を活用。小川優コマーシャル不動産事業ユニットリーダーは、環境配慮のほか「CLTを用いるハイブリッド木造なら、従来構造より一定程度の工期短縮が見込める」とその優位性を説く。
同社はCLTの製造・技術開発などを担うグループ会社を鹿児島に持つが、大通のホテル新築に使った木材約1060㎥のうち約8割が道産材。CLTは道内製材工場で生産されたものだ。「輸送コストや納期の問題があり、道内の開発には道産CLTを活用することにした」(小川ユニットリーダー)。
三菱地所のケースのように、道内での木造中高層建築による道産材需要増が期待される中、北海道木材産業協同組合連合会の内田敏博副会長は「道内林業・木材産業の技術開発や人材確保など、供給体制構築を急ぐ必要がある」と指摘する。
中高層建築物木造化は、安定的な木材需要をもたらすことが見込まれる。この機を逃すことなく道産材供給体制が整えば、ウッドショックのような国際的情勢の変動に強いサプライチェーンを構築することも可能だ。既に北海道にとって、中高層建築物木造化は遠くの出来事ではない。
(北海道建設新聞2021年9月27日付1面より)