宇宙船「ノストロモ号」の乗組員が未知の凶暴な宇宙生物に次々と襲われていく―。ご存じリドリー・スコット監督のSFホラー映画『エイリアン』(1979年)である。映画史に残る傑作だった。まがまがしくも美しいエイリアンの姿を思い出すだけで鳥肌が立つ
▼終盤の息詰まる攻防を覚えている人も多かろう。最後まで生き残った女性がエイリアンもろとも母船を爆破。自身はシャトルで脱出する場面である。ほっとした女性は冷凍睡眠装置に入ろうとするが、そこでエイリアンもシャトルに乗り移っていたことに気付く。命を懸けた壮絶な戦いがまた始まる。倒したはずの相手がしつこく繰り返し襲ってくるのは、ホラー映画の常道だろう
▼物語だからこそ怖くても楽しめる。現実だとそうはいかない。一時は制圧したかに見えた新型コロナウイルスが、再び世界各国で猛威を振るい始めた。新たな脅威となる「オミクロン株」という変異株まで出現したそうだ。エイリアン並みにしつこい怪物でないか。オミクロン株は最初に南アフリカで見つかった。英国やドイツ、香港などでも確認されているという。WHOはデルタ株と同じ「懸念される変異株」に指定し、警戒を呼び掛けている
▼収束状態が続く日本も危機感を強め、きょうから全ての外国人の新規入国を原則停止した。海外との交流が元に戻りかけていただけに残念だが、第6波の懸念が拭えない以上、様子見もやむを得まい。このウイルスは急に姿を消し、人間に隙ができるとまた攻撃してくる。どうやらほっとするのはまだ早いらしい。