北京オリンピック

2021年12月10日 09時00分

 中国政府を批判して逮捕されたものの、命からがら逃げ出し今は亡命先のタイで暮らす顔伯鈞という人がいる。その一部始終を記した『「暗黒・中国」からの脱出』(2016年、文春新書)に現在の中国の本質に触れた部分があった

 ▼顔氏はこう指摘する。「中国共産党の独裁体制を支えるのはその資金力だ。彼らは資金の輸出や経済協力関係を通じて、他国の政府を買収してみずからの側に引き寄せ続けている」。安価な労働力を提供して世界の工場となり、大量生産した製品を輸出して外貨を稼ぐ。グローバル化に便乗した1978年以来の改革開放路線は大成功を収め、今やGDPは世界第2位である。ただし改革開放もしょせんは外向きのポーズ。膨大に蓄積された資金の陰で犠牲になっている人も大勢いる

 ▼残酷な状況が次々と明らかになる新疆ウイグル自治区での人権侵害、香港での民主化勢力弾圧、アフリカ諸国など発展途上国での経済支配―。傍若無人な振る舞いに多くの国が眉をひそめている。そんな中だから不思議はない。米国や英国、オーストラリアといった西側先進国から、来年2月の北京オリンピックに政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」の動きが出ているのだ

 ▼平和の祭典を政治問題化するなと中国は怒るが、開催国だからこそ襟を正せというのが国際社会の主張だろう。資金集めの道具ともなる北京オリンピックを手放しで認めるのは犠牲者を見殺しにするのと同じ。日本はまだ態度を決めかねている。まさか中国に引き寄せられている人物がいるわけではあるまい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • 日本仮設
  • 川崎建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,657)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,497)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,123)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (982)
おとなの養生訓 第109回「うろ」 ホタテの〝肝臓...
2017年03月24日 (721)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。