小径木材二重構成「ダブルティンバー」 カラマツなど有効利用策として注目
竹中工務店の北海道地区FMセンターがこのほど完成した。一般流通する住宅用の小径木材を二重に構成する架構システム「ダブルティンバー」を採用。戸建てで一般的な在来軸組工法を事務所や店舗など非住宅に適用できるため、大断面の集成材工場がない道内木材業界の課題解決につながる。今後、カラマツなど道産材の有効利用策の一つとして注目されそうだ。
W造、2階、延べ856m²の規模。札幌市中央区南20条西9丁目1の26に構え、昨年12月に業務開始した。
特徴の一つはダブルティンバーで、120mm角の小断面流通材を二重に構成しながら荷重を分散させ、住宅用のモジュールより大きい3.64×4.55mスパンを実現。たわみの少ないゲルバー梁を同時に用いることにより、在来軸組工法を非住宅に適用できるようにした。
ようてい森林組合が育てた仁木町産の木材を使用。プレカットと集成材加工は森町のハルキ、CLT製作は留辺蘂のオホーツクウッドピアが担当した。
道内屈指の環境性能を備え、建築環境総合性能評価システムのCASBEEスマートウェルネスオフィスで最高位Sランク、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)のZEB Readyを取得した。
執務スペースは入れ子構成で、周囲に共創空間や廊下など中間領域を配置することで、質の違う2種類の空間を確保。光や熱の入りやすい南西面は半透明で高断熱の中空ポリカーボネート外壁で開放感を持たせた。逆に、太陽の当たらない北東面はガルバリウム鋼板で閉じた仕様にした。
開口部は自然換気が機能するよう、風が通り抜けやすい最適なサイズや位置をシミュレーションで導き出した。地下水を100%利用。外側の共創空間はラジエーターに温水や冷水を流して放射熱で空調、内側の執務スペースは個別性、応答性を重視してエアコンを採用する。
木造建築は、CO₂の貯蔵と吸収の両面で効果が期待できるため、低炭素社会の実現に向けて注目される。道内はカラマツが使用の適齢期を迎えるが、多くは梱包(こんぽう)材やパレットなど付加価値の低い産業資材で使われ、高付加価値の建築材料としての利用割合は、本州に比べて低い。小規模の集成材工場が多いのが理由だ。
ダブルティンバーは道内の集成材工場で加工可能な住宅用小径材を使うため、大断面の集成材工場がない道内でもカラマツなどの利用を促すことが可能。北海道地区FMセンターの場合、建設時のCO₂排出量はS造と比べ約70%削減でき、低炭素化の面でメリットが大きい。
北海道支店の藤田純也専門役は「森を巡る産業を豊かにするため、資源、経済、炭素が循環するよう設計した建物。道産材の価値や可能性を示すことで、海外の木材市場に影響されない独自の世界を作って行ければ」と話している。