最近ほとんど聞かれなくなった言葉の一つに「ミーハー」がある。新しいモノやコトがはやり出したとみるやすぐに飛びつく人を指す。ある芸能人が人気になるとそれまで好きだった人を捨てて乗り換え、納豆が健康に良いと聞くとスーパーに走りどっさり買い込む―。覚えのある人も少なくないのでないか
▼進取の気性に富むといえば聞こえはいいが、どちらかといえば考えが浅はかなお調子者との意味合いが強い。そもそも日本の国民性として新しもの好きな傾向があるとされる。外来の文化を受け入れ発展してきた歴史を持つ国だからかもしれない。ミーハーも個人の趣味にとどまっているなら取りたてて不都合はない。ただ政府がそれを地で行くと、時に深刻な事態を引き起こす
▼東京、東北の両電力管内で大規模停電が発生しかねないとして、政府が初めて「電力需給逼迫警報」を発令した22日の危機的状況もそうだ。電力自由化や脱原発、脱炭素、再生エネルギーといった流行に飛びついた結果である。経営の効率化と料金値下げを狙った電力自由化や脱炭素の流れで、気が付けば大手電力から冗長性を担保していた余剰設備が失われていた。東日本大震災後の脱原発の動きにも便乗。おまけに夜間や荒天時には役に立たない太陽光発電にばかり肩入れし、需給調整を難しくしている
▼その一方、忘れてはならない安定供給や信頼性には傷を付けてはばからなかったわけだ。電気は命に関わる基幹インフラである。改革は100年の大計を持って進めるべきものだろう。ミーハーとは無縁に願いたい。