太平洋戦争での東京大空襲、東日本大震災直後の福島第一原子力発電所事故、オウム真理教による地下鉄サリン事件。場所も性質も全く異なる3件の出来事だが、実は共通点があった
▼いずれも3月に起こったことである。東京大空襲は1年続いたものの、1945年3月10日の夜間空襲の被害が最も大きかった。地下鉄サリン事件は95年の3月20日。福島原発1号機原子炉建屋水素爆発は2011年3月12日である。そのため今月は追悼や振り返りの行事も多く、被害の記憶と継承が話題に上りがちだ。偶然とは思うが同じ3月にこれらの出来事を暗示するメッセージを伝え、日本に自国の窮状を訴えたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はやはりただ者ではない
▼おととい、オンライン形式で国会演説を行った。ゼレンスキー氏はまず、ロシアがチェルノブイリ原発を戦場に変え、核物質が危険な状態にあると指摘。空爆では街が焼失し、子どもを含めたくさんの人が殺されている現実を語った。日本の過去の惨禍には触れなかったが、空爆による虐殺のむごさや、故郷を追われる悲しさが日本人なら分かるはずと訴え共感を呼んだ。サリンの恐ろしさは日本が一番知っていると、ロシアの化学兵器攻撃への強い懸念も共有した
▼氏の言葉は確実に響いたのでないか。いち早くウクライナへの援助とロシアへの制裁を決めた感謝の言葉も本心だろう。戦争を止められない国連の改革に日本がリーダーシップをとの要請もあった。桜の時期である。日本も平和のための新たな役割に乗り出したい。