医療機関の今

2022年05月24日 09時00分

 NHKの人気番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』の放送内容をまとめた同名の新書(NHK出版)を読んでいて強く印象に残る言葉があった。訪問看護師の秋山正子さんが語った、「まだ、山は降りていない。登っている」である

 ▼余命宣告を受けているがん患者にある日、気持ちを楽にしてもらおうと「山を降りているんだから、そろそろ荷物を下ろしたら」と声を掛けたところ、返ってきたひと言だという。それを聞いた秋山さんはハッと気付いた。患者さんはまだ諦めずに頂上を目指している。強い気持ちで病と闘っているんだ―。以来、仕事がうまくいかないときや悩んだときには「まだ、山は降りていない。登っている」を思い出し、自分を励ましてきたそうだ

 ▼世間の空気に流されることなく、今もそんな思いで毎日を過ごしている医療関係者も多いのでないか。新型コロナウイルスに神経をとがらせる人はかなり減ったものの、コロナ患者に対応している病院ではいまだ厳戒態勢が続いている。運用は柔軟になったが、発症なら入院加療が原則の指定感染症法2類相当は維持されているため、対応病院の負担は重いままだ。オミクロン株で感染者数が高止まりしているのも現場の逼迫(ひっぱく)に拍車をかけている

 ▼政府は先週、マスク着用緩和の目安を発表。人々の警戒感は薄れる一方である。医療関係者や保健所の奮闘を伝える報道もめっきり減った。実際はまだまだ楽ができる状況にはない。皆が安心して暮らせるのは医療関係者がまだ山を降りていないからだ。忘れてはいけない。


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