昨今の出前はウェブで管理されているため届くまでの時間がほぼ正確に分かるが、かつてはそうでなかった。いわゆる〈そば屋の出前〉である
▼「きょうの昼はざるそばにでもしよう」と店に電話を掛けると、テキパキした対応で「はい、すぐにお持ちします」の返事。ところがしばらく待っても来ない。空腹感ばかりがどんどん増していく。しびれを切らして再度電話をすると、「今出たのですぐ着くと思います」。店の主人から威勢のよい言葉が返ってきたものの、実はまだゆでてもいなかったというオチ。もちろん全てのそば屋がそんなのんきでもなかろうが、当てにならない物事の例えになるくらいだから、誰もが経験しがちなことだったのだろう
▼失礼ながら、この人の発言を聞いてまず思い浮かんだのが「そば屋の出前」だった。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長がおとといの記者会見で、新型コロナウイルスの「終わりが視野に入ってきた」と語ったというのである。NHKが伝えていた。テドロス氏はコロナが最初に確認された2019年12月から一貫して発生地中国をかばい、根本の問題から目をそむけ続けた。当然の成り行きとして情報の発信と共有は遅れ、人の移動制限もなされない。対策はいつも後手に回った