会社探訪記 グリーンテックス 発酵技術に商機あり

2022年09月21日 11時00分

有機肥料の可能性へ着目

 グリーンテックス(本社・旭川)は、生ごみなどの廃棄物を活用した堆肥製造や土壌改良事業を営む。スクラップ業から緑化事業へ転身し、土の分析を続けるうち土壌の重要性を発見。廃棄物を発酵させ堆肥とする技術開発を進めた。不安定な情勢下で価格が上がる化学肥料の代わりとして有機肥料が秘める可能性に着目する。

「土づくり」を主眼に事業展開する

 1961年に佐藤商店として設立。当初は鉄鋼のスクラップ業を営み、2代目の佐藤一彦社長が就任した80年代当初はスクラップ価格が高騰し、好景気の波に乗った。

 だが、第2次オイルショックが起きると一転して赤字に転落。素材産業に未来はないと察した佐藤社長は、数日間ホテルにこもり、経済紙を読みあさった。新聞には環境という言葉が頻出し、さらに読み込んだ結果、緑化事業に商機があると見込んだ。

 89年に緑化事業部を立ち上げ、92年に現社名に変更したが、失敗の日々が続いた。仕様書通りに土を吹き付けても堤防は緑化せず、「もうお前の所には仕事はやらない」と元請け業者に叱られたこともあるという。

 「なぜ生えてこないのか分からないことが悔しかった」と佐藤社長。施工現場の土と他社の土を持ち帰り、5年間にわたり分析を続けたところ、他社と比べ土が軽く、雨が降ると土が流れてしまうことが判明した。対策としてゼオライトを混ぜてみたところ、順調に育つようになった。

 土壌の性質が植生の出来を左右することに気付いた佐藤社長は「健康的な土づくり」を主眼に土壌改良の技術開発に注力。抗酸化作用のあるヒトデの粉末を混ぜた土壌改良材や、微生物で生ごみを堆肥化させる発酵促進剤などを開発していった。

 旭川開建と共同開発した植生工法は、浄水汚泥を活用した。浄水汚泥には緑化を促すシルトが含まれていることを発見し、実用化のため市内の製紙工場から2000㌧の浄水汚泥を獲得。山林や畑地の土に代替でき環境に負荷をかけない工法は、2003年にNETISに登録され幅広く活用される。

 近年では下水汚泥を堆肥化する「G―TEXシステム」の開発にも力を入れる。脱水した下水汚泥に発酵促進剤を即座にかけることで発酵を促し、無臭の堆肥ができる仕組みだ。

 美瑛町では下水処理場と浄化センターに導入され、町では家庭菜園用の堆肥として町民への配布も始まった。複数の自治体からも問い合わせがあり、普及すれば有機肥料として下水汚泥が活用できると期待を込めている。

 生ごみや廃棄物を発酵させ有機肥料に活用する技術を培ってきた同社は、22年に「オーガニックな緑地管理元年」を宣言。指定管理者として管理する旭川市内のパークゴルフ場など約100haの芝生維持について、有機肥料を積極的に活用した緑地管理を進める。

 背景には情勢の変化がある。化学肥料に使われるアンモニアや窒素、リン酸はほぼ輸入頼みで、不安定な情勢下では価格が跳ね上がり、品薄になることも多い。

 下水汚泥には大量のリン酸が含まれていて、化学肥料の代わりとして新しい市場を開拓できる可能性が大きいという。「廃棄物とされたものも特徴が分かれば有用な肥料にできる。将来的に化学肥料の代替としてビジネスチャンスが生まれる」と期待を寄せる。

 現在の従業員数は17人。「人の生き方も、いかなる技術も、自然の摂理に学ぶべし」を理念にさらなる土壌改良技術の開発を目指す。


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