最近はスーパーに行くと、何でもかんでも値上がりしていたり中身が減ったりしていて嫌になる。そう嘆いている人は多いのでないか。弁当類もその流れに無縁ではない
▼この前、手頃な価格の割には中身の充実した弁当を見つけ、家に帰って食べようとすると箸が固い物に当たる。何のことはない。弁当箱の底がかなり持ち上げられ、中身はうっすらと載せられているだけだったのである。箸が底面を突いたわけだ。文字通りの上げ底。上から見ただけでは量が減っていることは分からない。価格維持のための苦肉の策なのだろうが、だまされた感が強いのは否めない。底は徐々に上がっているようだから、上ぶたにくっつく日も遠くあるまい。そんな軽口の一つもたたきたくなる
▼このご時世だからか、逆に見た目は変わらず中身が3倍に増えた商品に絡むニュースに関心を引かれた。従来の3倍の長さを実現するトイレットロールの特許を侵害されたとして、日本製紙クレシアが大王製紙を提訴したのである。1990年代から物流効率向上とCO₂削減のため、ロールの長尺化に取り組んできた日本製紙は2016年に3倍巻きの「スコッティ」を発表。大王製紙はことし3月から3・2倍巻きの「エリエール」を発売している
▼ほぼ同じ大きさで長さを3倍にし、しかも柔らかくする特許が勝手に使われたと日本製紙は主張しているのだ。独自の技術を用い、他社と同じ機能を持つ商品を開発したのなら問題はない。消費者も選択肢が増えるのは歓迎である。大王製紙の技術が上げ底でなければいいが。