五輪汚職どこまで

2022年10月21日 09時00分

 小説家村上元三に、田沼意次の実像に迫った歴史エッセー「ひとりも潔白の者あるまじく…」がある。田沼といえば、十代将軍徳川家治の治世で老中を務めた人物。賄賂で動く悪徳政治家との印象が強い

 ▼中にこんな逸話があった。「毎朝、田沼屋敷へさまざまなことを陳情にくる諸役人、大名家の家老や留守居などはおびただしい数になる。客の刀を預かる屋敷では、畳に置いた刀が青海波を描いたようになった」。とはいえ、田沼だけが特別金に汚かったわけではない。当時の幕閣には人に便宜を図るのだから、見返りを受け取るのは当たり前という風潮があったらしい。昨年開かれた東京五輪・パラリンピックの幕閣にも、そのころの伝統を今も守り続ける人物がいたようだ

 ▼受託収賄容疑でおととい、4度目の逮捕となった高橋治之大会組織委員会元理事である。その屋敷も五輪で便宜を図ってもらおうとする依頼者たちの刀でいっぱいだったのでないか。一連の汚職事件での逮捕者は増えるばかりである。AOKIから始まり、KADOKAWA、大広ときて、今度は大手広告会社ADKホールディングスの幹部が東京地検特捜部に逮捕された。大会マスコットを販売したサン・アローも捜査を受けているという。容疑はいずれも贈賄だ

 ▼その資金のいずれもが最終的に、高橋容疑者に流れたと特捜部は見ている。大会組織委員会全体に田沼時代のような見返り当たり前の風潮があったとは思いたくないが、五輪では毎回、金にまつわる不正のうわさがつきまとうのも事実。悪しき歴史は断ち切りたい。


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