道内にある深層水取水施設は3カ所。その一つが岩内町地場産業サポートセンターだ。深層水ブームを背景に2005年から販売開始。思うように売り上げが伸びず、例年赤字を出す状況に陥った。しかし、近年は海外への海産物輸出に用いられるなど、再び脚光を浴びつつある。この商機をつかみ、地域に眠る資源をまちの活性化につなげようと、職員らが奮闘している。(高橋 秀一朗記者)
道内の日本海沿岸に位置する多くの自治体と同じく、かつてニシン漁で栄えた岩内町は過疎化に悩まされている。国勢調査によると、人口は1975年の2万5823人から、15年には1万3042人まで落ち込んだ。
岩内での深層水事業開始は、97年の民間企業による海洋調査が発端。町の沖合、水深300m付近の海域に深層水の特性を持つ水塊が見つかり、その後の調査で存在が確認された。年間を通して低温という特徴に加え、健康効果が見込まれるといった報道もあり、ブームになった。
町は2000年、地域活性化につなげようと、海洋深層水を用いた地域振興事業への支援を国に要望。01年から3カ年かけて深層水取水施設を整備した。水産加工業を支援する町水産研修センターの後継となる地場産業サポートセンターを隣接させ、大浜476に03―04年度で建設。総事業費約30億円に上る大型事業となった。
ところが、深層水の売上額は年平均で300万―400万円程度にとどまった。施設の維持補修費がかさみ、赤字が常態化。「民間企業に譲渡を」という話が庁内で上がるほど深刻化している。
このような状況の中、深層水のPRに奮闘しているのが、地場産業サポートセンターの釜谷豊和所長をはじめとする職員だ。家畜の餌として与えた場合の効果などについて、酪農学園大と連携して研究を進めている。また、町民らに深層水をPRする「深層水だより」を17年度から毎月発行。深層水の効用や深層水活用企業を紹介している。
明るい兆しも見え始めた。運送業関連への売り上げが伸びている。釜谷所長は「道北で漁獲されたホタテなどを運送する業者が、深層水を利用するケースが増えている」と話す。小樽を経由して韓国などに出荷される際、「深層水を使うと、より鮮度を保つことができる」という評判が、ドライバーの口コミで広がっているという。17年度の売り上げは600万円を超える見通しだ。
町は、深層水の効用に関する科学的根拠をはっきりと示せるよう、研究機関との連携を継続。また、ニセコエリアでの外国人観光客増などを見据えて商機を探る。あらゆる方面の需要を捉えながら適切にPRを重ね、売上アップを狙う。