今も歌い継がれるフォークグループ赤い鳥の名曲に「翼をください」がある。ギター抱えて仲間と歌った人もいれば、学校の合唱コンクールのために練習した人もいよう
▼歌い出しはこうだ。「今 私の願いごとが叶うならば 翼がほしい この背中に鳥のように 白い翼つけてください」(1971年)。幅広い年齢層にこれだけ長く愛されているのは、誰もが一度は「翼がほしい」と夢見たことがあるからだろう。この人もたぶん、小さいころから自分の背中に翼が生えるのを夢見ていたのではないか。ノルディックスキー・ジャンプの高梨沙羅選手のことである。どうやら背中に生えてはいないものの、足には目に見える以上の大きな翼が付いているようだ
▼おととい、18年平昌冬季五輪プレ大会として同地で開かれていたワールドカップ(W杯)ジャンプ女子個人第18戦で優勝し、W杯男女通算最多記録53勝に並んだのである。今はまだ20歳。W杯の初出場が11年、15歳だったのだから見事というほかない。ジャンプを観戦する上での楽しみはそれぞれあろうが、K点付近で再度揚力をとらえ飛距離を伸ばす場面に興奮させられる人も少なくないのでないか。高梨選手はこの揚力をとらえる能力が際立って高いという。それに必要なのは前傾姿勢の保持。バレエで培ったバランス感覚と柔軟性が生かされているそうだ
▼さあW杯次戦は3月12日のノルウェー。54勝の期待もかかるが高梨選手にとっては通過点に過ぎないだろう。「この大空に翼を広げ」、どこまでも記録を伸ばしてもらいたい。