震災から1カ月 地元業者が厚真川の応急復旧を振り返る

2018年10月09日 13時00分

よぎる2次災害、〝重機のリレー〟奏功

小金澤組などが土砂撤去に奮闘

作業を見守る小金澤組の池渕所長(右)と椎名常務

 北海道胆振東部地震の発生から6日で1カ月。最大震度7を記録した厚真町内では吉野地区などで山腹が広範囲にわたって崩れ、道道や河川に大量の土砂が流れ込んだ。地震発生直後から地元の建設業者などが応急復旧に奮闘し、未曽有の大災害に向き合っている。特に被害が甚大な厚真川では、小金澤組(本社・苫小牧)が幌内橋付近を中心に河道の土砂撤去や補強に取り組む。同社の池渕貴司所長らに、この1カ月を振り返ってもらった。(苫小牧支社・阿部 みほ記者)

 ■一刻を争う事態 約20社が集まる

 「住民が無事でいてくれれば」。地震発生直後に現場へ向かった池渕所長は、土砂で住家が流されている惨状を目の当たりにした。

 同社は厚真町内で、室蘭建管の厚真川改修3工区補正翌債を丸彦渡辺建設(本社・札幌)との共同体で施工中。地震で現場の一部とその周辺が土砂崩れを受けた。建管からの指示で工事は中断し、応急復旧にかじを切った。

 同工事から引き続き池渕所長が現場代理人を務め、椎名心常務が現場全体の管理に当たる。

 土砂が川をふさいでおり、池渕所長は降雨で水があふれる可能性を恐れた。「2次災害を防ぐため一刻も早く河道を広げなければ」。6日午前9時、応急復旧に着手した。

 協力会社に加え、建管から出動要請を受けた会社もあり、この現場だけで約20社が集結した。椎名常務は「協力会社以外に対応してもらうほどの災害復旧は初めて」と話す。

 ■工区全体で72台の重機が撤去作業

 まずは土砂を河道からかき出して堤防の外側へ搬出する必要があった。しかし作業を阻んだのが、崩れた土砂の軟弱さ。通常は重機で取り除いた土砂を運搬車で運ぶが、地盤の弱さで運搬車を入れることができなかった。

 そこで取った手法は、〝バケツリレー方式〟。最初に重機でかき出した土砂を、さらに重機でかき出して移動させる動作を繰り返した。

 敷鉄板で足場の安定性を確保しながら作業を進め、一度の土砂運搬だけで10回も土を移動させた。

 この流れを多数の重機で展開し、9月11日には工区全体で72台を投入。重機作業が交錯するため、接触防止に注意を払った。

 斜面が安定しているか分からない上、相次ぐ強い余震。応急復旧は手探りで進めるしかない。池渕所長と椎名常務は拡声器を常備して現場全体を監視。危険を感じれば作業から離れさせた。非日常の仕事は心身への負担が大きく、十分な休憩時間も確保した。

 ■被災地の復興へ地元業者が一丸

 現在は、根固めブロックと大型土のうで河道を補強中。日々作業内容が変わる中、トップダウンの指令系統だけでなく、オペレーターの声も聞いて最善の工法を探る。現場が一体となり復旧に取り組んでいる。

 河道掘削を終えた9月15日までは建管の監督員が現場に常駐。重機が円滑に確保でき、室蘭建設業協会の応援もあって迅速な作業につながった。「1社だけではできなかった」と椎名常務はこの1カ月を振り返る。

 胆振管内では安平町、むかわ町も甚大な被害を受け、日高管内も主に日高町と平取町が被災。各地の地元業者が復旧に当たってきた。ぎりぎりの対応を続ける中、使命感で自らを奮い立たせる。

 「一日も早く被災地の方々が安心して過ごせるような環境づくりをお手伝いしたい。不安を少しでも取り除ければ」と池渕所長。

 全ての現場が一丸となって被災地の復興へ全力を注いでいる。


関連キーワード: 河川 災害・防災 胆振東部地震

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