重大NEWS2018 (1)胆振東部地震

2018年12月17日 07時00分

激震と大停電で被害拡大

 経験したことのない激震が本道を襲った。9月6日午前3時7分、厚真町鹿沼の地震計が道内で過去最高となる震度7を観測した。その18分後には、全道を闇にのみ込む大規模停電(ブラックアウト)が発生。多くの人々が、情報入手もままならず混乱に陥った。

 未曽有の災害となった北海道胆振東部地震。激しい揺れや地盤沈下で多数の家屋が倒壊し、水道などライフラインも寸断した。震源地付近の丘陵地では無数の土砂崩れが起こり、一夜明けた被災地は山肌を露出した無残な光景が広がった。

 厚真町では住宅裏の斜面が崩壊。陸上自衛隊や緊急消防援助隊が全国各地から集結し、啓開作業などで地元建設業者の協力も得ながら、生き埋めになった住民救助で「72時間の壁」と戦った。札幌市内では、全国的にもまれな液状化地盤流出による大規模な地盤沈下が発生し、大地震の威力をまざまざと見せつけた。

大規模な土砂崩れが発生した厚真町吉野地区では、懸命な救助活動が行われた

 一方、全国初のブラックアウト。地震直後に主力電源である苫東厚真発電所をはじめ道内発電所の緊急停止で、離島を除く全道295万戸への電力供給が途絶えた。電力が欠かせない社会で、ブラックアウトは日常生活はおろか産業活動も停止へと追い込み、本道の電力系統の脆弱(ぜいじゃく)性を露呈させた。

 この地震による被害と影響はあまりにも大きい。被害額は道と市町村だけで2320億円に上り、さらに、観光は旅行キャンセルが相次ぎ、356億円の打撃を受けた。

■本格的な復旧・復興へ加速

 道や被災市町村は、インフラの本格復旧工事に向けて災害査定を鋭意進め、16年大雨災害を教訓に入札不調対策も整える。経済復興に向けては、道は経済・産業団体などと連携して緊急経済対策官民連携協議会を発足。「元気です北海道」を合言葉に、風評被害払拭(ふっしょく)と観光の客足回復に全力を注ぐ。

 札幌市は11月、清田区里塚地区の再発防止策を打ち出した。過去事例と比較し、液状化対策としては異例の早さだ。住民との個別協議や工法の詳細検討は残るが、秋元克広市長は「コミュニティー維持には早急に対策を示す必要があった」と話し、一日も早い復旧工事への着手を目指す。

 くしくも北海道命名150年の節目に発生した震災。官民連携協議会で高橋はるみ知事は「こうした経験を後世に伝えることがいま生きる私たちの責務」と述べ、宮坂尚市朗厚真町長も震災から3カ月を迎えた日に「犠牲者の思いを次世代に引き継ぐ」と決意した。

 政府は14日、国土強靱化基本計画の見直しを閣議決定した。大災害の教訓を確実に再発防止に生かすことは重要だが、頻発する自然災害への対応が後手とならないよう、短期間で効果が発現する対策を集中的に進める時期に来ている。

  ◇  ◇  ◇
 胆振東部地震、北海道新幹線札幌駅ホームや北広島市での日本ハムファイターズのボールパーク整備決定など。本道の将来を左右する出来事が多かった激動の1年を振り返る。


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