利休茶道のもてなし

2019年05月29日 09時00分

 茶道を確立させた千利休は客を心からもてなすことが茶の湯の神髄と考えていたらしい。流儀や作法にはこだわらなかったようだ。利休研究で名高い歴史学者桑田忠親氏の著書『茶道の歴史』(講談社学術文庫)に教えられた

 ▼茶席では身分の分け隔てなく亭主が客を同じ一人の人間としてもてなす。互いに「いい気持ちになれば、それが一座建立です。そういう相愛和合の境地をつくりあげることが、茶の道です」。客の気持ちを読み、茶席にいる間だけは心の裃(かみしも)を脱いで愉快にすごしてもらう。利休が豊臣秀吉とも徳川家康とも親交を深められたのは、そんなもてなしの精神に徹していたからである

 ▼今回の安倍首相のトランプ米大統領への手厚いもてなしも、利休茶道をほうふつとさせるものがあった。トランプ氏は令和初の国賓として25日からきのうまでの日程で日本を訪問。首相とゴルフを楽しみ、特別しつらえの升席で大相撲を観戦し、天皇、皇后両陛下主催の宮中晩さん会にも出席した。まさに下にも置かぬ歓待ぶり。一部の野党やメディアが「異例の厚遇」と論難し、ワイドショーでは「これでどれだけ見返りがあるのか」と文句をつける人までいたくらい。ただ欧米に比べ演出不足、気配り下手のかつての日本外交もまた批判の対象だったはず

 ▼貿易問題はあるものの今回、世界経済を先導する同盟国が絆を強め、内外にアピールできた意義は大きい。これも日本伝統の「おもてなし」の力だろう。とはいえ、度が過ぎると利休のように足をすくわれる。首相も気を付けられたい。


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