京アニ放火事件

2019年07月25日 09時00分

 北米アラスカの雄大な自然を撮り続けた写真家の星野道夫さんが著書『旅をする木』(文春文庫)に、感動を人に伝えることについてこんなエピソードを記していた。ある夜の友人との会話である

 ▼二人は宇宙に手が届くようなアラスカの星空を眺めていた。美しさに心を動かされ、この気持ちを人に伝えるにはどうすればいいか話し合ったらしい。そのとき友人はこう言ったそうだ。「自分が変わってゆくことだ」。写真を撮っても、絵を描いても、言葉をつづってもそのとき感じた気持ちは正確に伝わらない。感動を糧に成長した姿を見せることができてはじめて、それがどれだけ大きかったか伝わるというのである

 ▼彼ら、彼女らにとってその星空はアニメーションだったに違いない。非道な放火によって命を奪われた34人の方々である。感動を与えてくれたアニメを糧に成長し、仕事に選んだ方ばかりだろう。京都市伏見のアニメ制作会社京都アニメーション第1スタジオ放火事件からきょうで10日である。犠牲になった34人のうち、半数以上が20―30歳代の若者とみられるという。痛ましい以外の言葉が見つからない。しかもいまだ全員の身元確認はできていないそうだ。どれだけひどい火事だったか

 ▼亡くなった方々は自分が受けた感動を優れた作品に変え、多くの人に広めていた。悩みながら成長していく生徒の姿を描いた学園物も多く、等身大の物語に励まされた人も多いと聞く。これからもたくさんの感動を伝えるはずだった。その未来は永遠に失われた。こんな蛮行を許すわけにはいかない。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • web企画
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,635)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,461)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,112)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (977)
おとなの養生訓 第109回「うろ」 ホタテの〝肝臓...
2017年03月24日 (719)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。