春分の日が過ぎ3月も下旬に入った。新型コロナウイルス騒動で気もそぞろになっている間も、月日は確実に巡っていたようだ。来週からは新年度が始まる。新人を迎え入れる職場も多いのでないか
▼「初仕事コンクリートを叩き割り」辻田克巳。「初仕事」は新年の仕事始めのことで冬の季語だが、この句は古い殻を破り新たな環境に飛び込む新人の決意を表しているようにも読める。今はさぞ気合が入っていよう。仕事について記憶に残っている話がある。成人式でのことだ。一人の若者がクロネコヤマトの仕事着のまま会場に入ってきた。受付の人が聞くと、「休むとお客さんに荷物を届けられなくなるから仕事の合間に立ち寄った」とのこと
▼式典が終わると急いで立ち去ろうとする若者に、受付の人はこれから記念写真の撮影があると伝えた。すると若者は「こんな格好だから…」と辞退しようとしたという。受付の人はすかさずこう言ったそうだ。「何言ってるのよ!あなたが一番かっこいいですよ」。宮崎中央新聞社の水谷もりひと編集長が著書『日本一心を揺るがす新聞の社説2』(ごま書房新社)で紹介していた逸話である。仕事に誇りと責任を持つ若者も立派だが、それに気付き声を大にして「かっこいい」と伝えた受付の人も実に素敵だ
▼建設現場なら作業服、事務や営業ならスーツ、介護ならジャージと仕事着にもいろいろある。新人たちもこの春から、そのどれかで身を包むことになるのだろう。それがどんな格好であれ、誇りを持って一生懸命働いている姿は間違いなくかっこいい。