手話

2020年12月02日 09時00分

 何不自由なく耳が聞こえる人には想像もできない経験が、そこにはあるということだろう。先天性の聴覚障害を持つ疋田直子さん(20歳・当時)が書いた詩「聞こえるよ」(冊子『NHKハート展』)を読んで気付かされた

 ▼短いので全文を引く。「生まれてから/19年間/あらゆる音や声を/聞いた事がない/だけど/唯一聞こえる音が/私にはあるんだ/吸い込まれそうな夜空いっぱいに/咲いては消える花火」。優れた感性の持ち主である。音や声が聞こえないことで、視覚をはじめとする他の感覚が研ぎ澄まされたのかもしれない。特別な能力といえば手話もそうだと前から思っていた。思考と連動して手が動き、それを瞬時に読みながらコミュニケーションを成立させていく。素人からすると魔法のようにしか見えない

 ▼自民党の今井絵理子参院議員が11月30日の参院本会議で、その手話を交えて菅首相に質問した。国会の本会議では初の試みだそうだ。映像を見て自然でなめらかな動きに目を奪われた。実は今井氏の長男も先天性の難聴を抱える聴覚障害者なのだという。これまで子育てをしながら、障害者支援にも取り組んできたと聞く。どうりで自然なわけである。マスクをしていると口の動きが読めないとの聴覚障害者の声を耳にし、それならばと、彼らに伝わるように手話を使ったらしい

 ▼今回、今井氏の質問のおかげで、障害者の前に立ちはだかる壁にあらためて気付かされた人も多かったのでないか。今井氏の小さな行動は氏の意図を超え、打ち上げ花火のように遠くまで響いたようだ。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 川崎建設
  • 日本仮設
  • web企画

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,510)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,403)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,290)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,098)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (880)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。