栗山町 永禅寺 地域の関心引く千手観音
開創から90年を超す栗山町の永禅寺。昨秋、真新しい納骨堂内に高さ6mの千手観音が姿を現した。改築した本堂の天井には、中国人画家が描き下ろした大きな竜の水墨画も見える。約2年の工期を経て再建した寺は、檀家(だんか)だけでなく幅広く地域住民の関心を引く仕掛けをこらしたのが特長だ。
リニューアルの計画作りから完成まで総合プロデューサー役を務めたのが恵庭市を拠点とするコンサルティング業、北海道協立の石垣孝雄社長だ。1970年ごろから多くの寺院の設備に関わり、時には寺院経営の相談にも乗る。永禅寺の山田隆見住職は「寺が老朽化して対応に苦慮するようになり、数年前、旧知だった石垣さんに指南をお願いした」と振り返る。
石垣社長は山田住職と話し合って増改築のプランを練り、檀家への説明や利害調整、資金集めの手法、建築やしつらえのデザインなど続々とアイデアを提供。設計施工には親交のある田巻工務店(本社・恵庭)を指名し、自らの人脈で東北の宮大工に現場サポート役を依頼した。
「お寺は一般の企業社会とは異なり、言葉一つをとっても独特。誰でも仕事ができる世界ではない」と明かす石垣社長は、時間をかけて身に付けた専門知識に基づいて、備品や内装は自ら図面を描く。建築士にもアドバイスする。
会社勤めを経て、1989年に個人事業として北海道協立を発足以来、独自の寺院再建ノウハウを求める依頼が跡を絶たない。道内、中国にも協力工場を持ち、ものづくりにも対応できる。この半世紀で関わった寺院は、札幌・薄野地区の成田山新栄寺、苫小牧の中央院をはじめ全道1300カ所に達するという。
近年力を入れているのは、寺院に特色を持たせることだ。「画一的な寺ではなく、地域活性化に役立つ寺院を造りたい」。永禅寺の千手観音と水墨画はこうした思いから実現した。これ以前には、北見市の常念寺で阿弥陀如来像の設置を手助けした。目下、北海道胆振東部地震の被害を受けたむかわ町の永安寺に観音像を入れる計画で奔走している。
道内での実績を聞き付け、道外からも問い合わせが相次ぐ。今月80歳を迎えたところだが、寺の改築・整備の総合コンサルタントとして引きは止みそうにない。
(北海道建設新聞2021年2月25日付3面より)