道内3事業者の工夫を見る
観光業がコロナ禍に苦しむ中、脚光を浴びたアクティビティーの一つがグランピングだ。キャンプのテント設営や食事準備といったサービスを受けつつ、感染リスクを避けて自然を楽しめると人気を博す。コロナ禍で道内のグランピングにはどんな工夫が生まれたのか。3事業者に聞いた。
■チャーター飛行機で雄大な景色堪能 そら
チャーター飛行機でのグランピングツアーという大胆な取り組みを計画するのは十勝発スタートアップのそら(本社・帯広)だ。羽田空港から帯広空港へチャーター便で客を運び、中札内村で運営するグランピング場に宿泊してもらう。
周辺の飲食店や観光地を案内するほか、目玉はチャーター機での道内遊覧飛行。道東の雄大な景色を堪能してもらい、赤坂にあるレストランのシェフが考案した機内食を提供するぜいたくな企画だ。機内の空気は数分で入れ替わるため清潔に保たれるという。
同社がグランピング場を所有したきっかけはコロナ禍だった。利用客の減少を背景に、元の運営会社を昨年9月に子会社化した。
米田健史社長は「買収時からコロナ対応の設備にしようと決めていた」と振り返る。その後はレンジフードの新調や空気清浄機の設置などにも取り組みつつ、コテージ改装などのリニューアルに着手。今月にオープンし、春の大型連休の予約は道内客で満室状態だという。
■国指定史跡で自然やアイヌ文化に親しむ 三ッ輪商会
国指定史跡でのグランピングという珍しい取り組みに挑んだのは、アウトドア事業参入を進める三ッ輪商会(本社・釧路市)だ。キャンプ用品のスノーピーク(本社・新潟県三条市)に監修を受け、釧路観光コンベンション協会と企画した。
釧路湿原国立公園内の北斗遺跡で昨年11月、試験事業として宿泊者6人を招待してグランピングを実施した。ガイドと湿原を散策し、遺跡そばに設けたテントへ移動。縄文太鼓やアイヌ民謡の演奏、食事が提供された。
同社にとって初めての事業だった。ツーリズムビジネス課の酒井大輔課長は「ペグが地面に打てないなど国立公園ならではの対応が大変だった」と振り返る。
継続的な事業化は難しそうだが、アウトドア事業への手応えは得られた。16日には釧路市内の商業施設にアウトドア用品店をオープン。売れ行き好調で仕入れに苦労するほどだという。今は用品レンタルやビギナー講習なども準備を進める。
■貸し切りサウナで衛生面も配慮 ガーデンズリゾートときわ
札幌市内のガーデンズリゾートときわは、ベッドやキッチンを備えたコテージに泊まれる貸し切りグランピング場だ。シェフの作るビュッフェやジビエ、スノーシュートレッキングなどを提供する。
オーナーの細川喜寛さんによると、コロナ禍は大打撃だったという。主にインバウンド客を見込んでいた昨春はキャンセルが多発。それでも5月以降は市内や道内からの客が増え、以降は集客も好調だ。
コロナ禍では元から人気だった手作り薪(まき)サウナの改良に取り組んだ。サウナブームにも背中を押され蒸気の湿度を高く保つなど工夫を重ねた。貸し切りのため一般のサウナに比べ衛生面も安心だ。
各者に共通するのは、コロナ禍でも新しい挑戦や工夫で今を乗り越えようとする姿だ。観光業を主産業とする本道ではグランピングの役割も大きい。道内観光のけん引力に期待は高まる。
(北海道建設新聞2021年4月30日付3面より)