若者が支持 変わりつつある「家に求めること」
道内で平屋建ての家が増えている。国土交通省の統計によると、2021年の年間着工数は過去10年で初めて2000棟を超えたことが分かった。12年に比べて58%多い水準。平屋は階段の上り下りを避けたい高齢者に好まれるイメージが強いが、コンパクトな家に違和感を持たない若い世代にも支持が広がっている様子が浮かび上がる。
建築着工統計で、居住専用の木造住宅について階数の内訳を調べた。21年の平屋は道内全体で2163棟と、コロナ禍で落ち込んだ前年から400件弱の拡大を見せた。増加率は2割強。2階建ては1万2341棟で木造住宅の82.3%を占めるものの、前年からの伸びは617棟にとどまり、着工シェアが1.5ポイント低下した。一方で平屋のシェアは12.7%から14.4%に高まっている。
北海道セキスイハイムでは昨年1年を通して、平屋の棟数が着工ベースで前年比5割増となった。シェアはこれまで10%程度だったが約5ポイント拡大。経営戦略室によれば「これまでの棟数が少なかったせいもあるが、全道各地で受注が伸びた。高齢世帯だけでなく若い家族にも人気」という。
土地に余裕のある町村部だけでなく、札幌でも増加トレンドが鮮明だ。札幌はもともと3階建てが珍しくない住宅密集地域で、10年前なら平屋の割合は2%を切っていたが、21年は3.7%。実数は189棟で、12年の倍近い。
札幌市東区を本拠とする工務店の藤城建設は18年秋、平屋専門の「平家製作所」ブランドを立ち上げた。21年度のサイトのアクセスは前年度より10%増えたという。完工棟数は19年度との比較で25%多い水準。施主の半数が40代前半以下だ。営業担当者は「核家族で育った今の子育て世代はコンパクトな平屋に違和感を持たない。2階建てに比べて雪下ろしの危険度が低いのも長所となる」と話す。
建築コストを考えれば平屋は割高だ。同じ広さの2階建てと比べて基礎や屋根の面積が大きく、坪単価が上がるためだ。「選ぶ人は、コスト高を認識した上でそれでもメリットがあると考えて決めている」(北海道セキスイハイム)。
人口減に伴って、1世帯当たりの人数も減少が続く。平屋着工の伸びは、住宅に求められるものが変わりつつあることを象徴している。
(経済産業部 吉村慎司)