札幌市西区に三角山というまさにピラミッドのような形をした山がある。同じ北海道に住んでいても近隣の人や自然愛好家以外にはなじみが薄いかもしれない。住宅地に挟まれているため気軽に野趣を楽しみたい人にはうってつけ。1年を通して多くの人が訪れる人気の山である
▼標高こそ311mと低いものの、ジャンプ台で有名な大倉山への縦走路もあり、筆者も何度か歩いたが山奥に分け入った気分を味わえる。今回、ヒグマ騒動が起きたのがその縦走路のすぐ脇だったという。先月末、巣穴らしきものがあるとの通報を受け、市の職員らと共に付近を調査していたNPOの職員2人が巣穴から飛び出してきた母グマに襲われけがをした。逃げた母グマはまだ見つかっていない
▼「熊の子が夜を引き摺る音すなり」三木基史。巣穴の中には今も子グマ2頭が残されたままだそうだ。市は周囲を封鎖。母グマが近くに隠れている可能性も考慮し、子グマについては保護も駆除もせず監視を続ける方針なんだとか。この事態を受けて道も札幌市内を対象に「ヒグマ注意報」を発令。今月いっぱいまで要注意期間として安全な登山やゴミ出しルールの徹底を呼び掛けている
▼母グマだって人間が春に大挙押し寄せてくる場所に巣穴を掘っていたとは思っていなかったろう。この冬の異常な雪の多さに適地を選ぶ感覚を鈍らされたのかもしれない。不幸な衝突を避けたいのはお互いさま。気付けば子グマともども山奥に消えていたというのが理想だが、さてどうなるか。毎日目にする三角山だけに、気をもんでいる。