公共建築で木材使用、再エネ推進 事業費増加など課題も
2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すゼロカーボンシティ。十勝管内では19市町村のうち9市町村が宣言した。各地で再生エネルギー導入や二酸化炭素排出抑制に向けた計画策定に着手し、目標実現へ踏み出している。公共建築では環境への配慮を踏まえ、木材の使用や再生エネルギー設備の導入など従来の計画を見直す動きが目立つ。
7月末時点で帯広、音更、士幌、上士幌、鹿追、清水、更別、大樹、足寄の9市町村がゼロカーボンシティ宣言を表明。今後の宣言に向けて新得町と幕別町が調査を進めている。
21年に十勝総合局が全道14振興局で初の「ゼロカーボン行動十勝宣言」を出した。管内全体での脱炭素社会実現に向けて帯広建設業協会や十勝測量設計協会など22団体が賛同。同局は宣言に向けた情報提供や支援を展開している。
宣言した自治体は、公共建築にゼロカーボンを取り込むよう、整備計画を見直している。
環境省から脱炭素先行地域に選ばれた鹿追町は、役場周辺にある町民ホールなど既存公共施設について、北方建築総合研究所の協力を受けてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化改修に取り組む。老朽化が進む山村留学センターは、複合化して改築し、ワーケーションや学童保育を受け入れ、自然体験を通して脱炭素を学べる場とする。
企画課企画係ICT・エネルギー担当の林大介係長は「ZEB化改修で既存施設を最大限活用し、脱炭素と基幹産業が共存できる鹿追町モデルを確立したい」と話す。
清水町は体育館の移転新築を計画。延べ3275m²の規模で24年度着工、25年秋の供用開始を目指す。基本設計から脱炭素の視点を取り入れ、太陽光パネルの導入や屋根の一部をW造にする案を盛り込んだ。
だが町民からは脱炭素関連による事業費増額を心配する声も出ている。安ケ平宗重社会教育課長は「脱炭素は重要な検討材料。しかし、予算との兼ね合いで設計変更が生じる可能性はある」という。
更別村は学校給食センター(RC造、平屋、延べ422m²)の移転改築を計画。23年度設計、24年度着工を目指していて、新施設には地中熱や太陽光発電などの再生エネルギーを導入する方針だ。荻原正教育長は「視察を重ねた結果、当初予定になかったゼロカーボン関係の基本設計が必要となった。改築着工のスケジュールは後ろ倒しになるだろう」とみている。
環境省の集計によると、ことしに入ってから7月末までに全国で244カ所が新たに宣言した。累計は758カ所となり、全国の自治体のうち約4割が表明。今後も増加する見通しだ。
脱炭素を考慮した公共施設の在り方の検討、設計変更や着工時期の遅れ、再生エネルギー設備や高騰する木材の使用による事業費の増加。2050年の環境を見据える足元には、クリアしなければならない課題が山積している。