子どもが生まれたことを喜ぶ歌は世の中にたくさんある。名曲も多いが、夏川りみの『童神』(古謝美佐子作詞、佐原一哉作曲)もその一つだろう。りみさんの真情こもった歌声を聴くといつも胸が熱くなる
▼後半にこんな一節があった。「泣くなよーや ヘイヨー ヘイヨー 月の光浴びて ゆういりよーや ヘイヨー ヘイヨー 健やかに 眠れ 嵐吹きすさむ 渡るこの浮世 母の祈り込め 永遠の花咲かそ」。「天からの恵み」を受けて生まれてきたわが子に対する、深い愛情と慈しみの心が歌われている。子どもの健やかな成長を願う気持ちは、どの親も変わらない。そんな親の気持ちを踏みにじる子どもへの暴行が、信頼して預けていた保育園で行われていたとはどういうことか
▼静岡県警が4日、裾野市の認可保育園〈さくら保育園〉で以前保育士をしていたいずれも30歳代の女性3人を逮捕した。当時担当していた1歳児クラスの園児に対し、日常的に虐待行為を繰り返していた疑いがあるという。虐待の中身がすさまじい。足をつかんで宙づり、怒鳴りつけて頬をつねる、真っ暗な排せつ室に放置、カッターナイフで脅す―と耳を疑うことばかり。内部通報者の告発で発覚したものの、園長は外部に情報が漏れないようスタッフに誓約書を強制するなど隠蔽(いんぺい)工作をしていたそうだ。この園長にしてこの保育士あり、か。園長はきのう、市に刑事告発された
▼保育園は浮世の厳しい事情で親が子を見られないときの強い味方である。母の祈りを無視するようでは保育士は務まるまい。