深掘り 北海道済生会 櫛引久丸常務理事

2022年12月15日 13時00分

櫛引久丸常務理事

商業施設で介護や福祉展開

 済生会小樽病院を運営する北海道済生会(本部・小樽)は、大型商業施設「ウイングベイ小樽」を拠点に医療・介護・福祉事業を拡大している。小樽ベイシティ開発(OBC)と連携し、健康と福祉を合わせたウエルネスタウン構想を策定。地域ケアセンターや発達支援事業所を設けるなど全国でも珍しい商業施設の活用手法を取る。櫛引久丸常務理事に事業展開を尋ねた。

 ―なぜ商業施設に介護や福祉機能を取り入れようと考えたのか。

 単純に医療モールやクリニックをやるつもりはなかった。うまくいく時とそうでない場合がある。地域課題の解決に特化し、市民生活の変化が実感できるようなものを考えていた。目を付けたのは空白地帯だった児童発達支援や放課後デイサービス、高齢者・障害者の孤立、孤独対策。特に発達支援は市内で普及しておらず、事業所があっても高学年になれば打ち切られてしまう問題があった。

 小樽ウイングベイは親子をはじめ多くの市民が集う。新しいコミュニティーをつくるには適した場所だと考えた。ただ、OBCは施設内で福祉ができるのか想像しづらかったようで、時間をかけて理解してもらった。21年に健康福祉ゾーン「済生会カレッジ」を5番街1階に開所し、機能の一つとして発達支援事業所「きっずてらす」を設けた。この施設は済生会小樽病院の発達外来と連携したり、施設内にある屋内遊園地などを利用しながら支援に当たっている。

 ―どのような反応があったか。

 きっずてらすはオープンから4カ月で満員になった。ニーズがあると感じ、すぐに「きっずてらすDuo」を増設。価値を高めるため児童と学童を機能別にした事務所を作った。ここも4カ月で目標件数に達している。

 相談支援事業所があると、母親が気軽に訪れてくれる。行政だと相談過程が複雑だが、ここでは小樽市の受託事業もやっていることから一括の窓口で対応できる。われわれだけではできないことを商業施設と連携することで実現できた。病院の健診患者の増加にもつながっている。

 来年度に向けて3カ所目となる「きっずてらすJOB」の準備を進めている。青年期の支援体制が未整備なため、就労準備特化型とする。レストランだった空きテナントに入居する予定だ。既存のキッチンなどを活用した調理実習やプログラミングを学ぶなど18歳まで支援し、社会に出られるように貢献したい。

 ―小樽ウイングベイを拠点に今後どのような展開を考えているか。

 ソフト面が固まりつつあるため、ハード面にも手を付けたい。OBCと考えているのは、施設内に住居や看護学校をはじめとする教育機関を入れて地域資源を最大限生かすことだ。サービス付き高齢者住宅を作れば病院と連携できるし、学校も人材育成につながる。最終的にはヘルスケアが集積するウエルネスバレーといった新たな価値を構築したい。

 人口減少に伴い、小樽だけでなく地方都市の百貨店や大型商業施設は苦戦している。病院も同様の問題を抱える。生き残るためには地域課題にしっかり向き合い、地元企業のノウハウで新しい価値を生み出すビジネスモデルが重要になるだろう。

(聞き手・武山勝宣)

 櫛引久丸(くしびき・ひさまる)1963年7月生まれ、小樽市出身。83年に旧北海道済生会小樽北生病院に入職。2012年に事務部長、15年に院長補佐を歴任し、18年から現職。札幌市立大非常勤講師を務める。

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