研究発表会北海道大会で火山砂防セッション
砂防学会は11日、3日目の研究発表会北海道大会で、火山砂防セッションをした。火山防災の研究を進める技術者3人が胆振管内にある活火山・有珠山を題材に取り上げた。2000年噴火から20年が経過し、次の噴火がいつ起きても不思議ではない有珠山。甚大な被害を未然に防ぐため、噴火の兆候を見極め、噴火の際の被害が想定できる最先端の調査機器や技術を紹介した。過去の噴火から既存砂防施設の効果を高めるハード対策の検討結果なども報告された。
有珠山は、直近で1977年、2000年に噴火している。77年噴火は水蒸気爆発によって火山灰が降り注ぎ、死傷者を出す大惨事をもたらした。2000年噴火は北大大学院理学研究科附属地震火山研究観測センターの岡田弘教授(当時)が近日中の噴火を予知し、住民の事前避難を成功させた。
過去を含め、いずれの噴火も人命や財産を守るため、砂防施設の整備や最新研究を進める契機となった。噴火周期は20―30年程度と言われ、次回の噴火が近づくにつれて防災研究も急ピッチで進められている。
日本工営(本社・東京)広島支店技術部の早川智也次長は「有珠山入江川における小型無人ヘリ調査について」を発表した。
外輪山の中に食い込み、防災上警戒すべき渓流となっている入江川の土石流発生に備え、北海道開発局の小型無人ヘリコプターを使ってLP(レーザープロファイラー)計測や火山灰採取に取り組む状況を中間報告。LP計測では09年に室蘭開建が行った航空LP測量と差分解析を進めたところ、土砂の移動はほとんど見られないとした。
札幌開建河川整備保全課の村上泰啓事業専門官は「有珠山噴火を想定したドローン調査のための基礎的検討」を解説。「噴火時の撮影、航空レーザー測量を迅速にやることを考えると、離発着地点を選ばないVTOL型の固定翼ドローンが有利」と述べ、航続距離が120kmある空解(本社・東京)のQu―Kai FUSIONなどを紹介した。
熱映像の撮影が可能な米国Autel Robotics社のドローンを用いた火口原の撮影動画も公開。ドローンを使った調査の課題点として、携帯電話のLTE回線を使えず、対地高度で法律上の規制があることを挙げた。
国土防災技術北海道(本社・札幌)の柳井一希技術業務部係長は「有珠山の火山噴火緊急減災ハード対策の詳細検討事例」を発表。有珠山火山噴火緊急減災対策砂防計画の実効性を高めるため既設砂防施設について除石と伐木のほか、ブロックによるかさ上げなどの必要性を強調した。
管理用道路からアクセスがしやすい理由などから「小有珠川の4号導流堤と7号砂防堰堤を優先的に除石すべき」と提起し、各施設内の伐木の重要性にも言及した。
昭和川では、鋼矢板製の1号砂防堰堤上に、コンクリートブロックを積んでかさ上げすることが短期的な緊急減災に有効だとした。