創業の地に「みんなの工場」 雇用確保と観光客誘致で貢献
化粧品や香水の開発、製造販売を手掛けるシロ(本社・東京)は、1989年に砂川市で誕生したローレルという農産加工物の製造販売業が前身だ。創業の地でこのほど工場併設の複合型店舗「みんなの工場」をオープンさせた福永敬弘社長(49)に期待や展望を聞いた。

福永敬弘社長
―みんなの工場のコンセプトは。
大人から子どもまで市民や観光客など全ての人に開かれた工場という意味を込めた。工場建設に関わる「みんなのすながわプロジェクト」では、ワークショップなどを通じて多くの人に協力してもらったが、工場はまだ完成ではない。外構などはあえて手を加えず、自然の力を借りながら10年後の完成を目指している。
われわれの目的は、訪れた人にものづくりを感じてもらうこと。みんなの工場でものづくりに触れた子どもたちが成長することが、シロだけでなく社会全体の大きな利益となる。
―本社は東京に置くが、首都圏への工場設置は考えなかったのか。
当初は1都3県への設置を考えていた。特に砂川は雪が多く、物流にとっては大きな障害となる。それでも砂川を選んだ理由は、創業の地であるということに他ならない。少子高齢化や人口流出が続く砂川を守るのも私たちの使命だ。工場で雇用を確保し、カフェなどで観光客を呼び込むことで砂川に貢献したい。
―コロナ禍でも精力的に新事業を進めた理由は。
入念に計画を立てるより、社会の動きを見ながら本能の赴くままに〝ものづくり〟をするのがシロのスタイル。大手からM&Aの誘いをいただくこともあるが、シロは常にニュートラルであるべきだと考えている。独立していることで、さまざまな変化に対応できる。
―昨年、砂川パークホテルを取得した狙いについて。
取得は当初全く考えていなかった。専門領域以外には手を出すべきでないと考えている。しかし、工場開設に向けて市民などの意見を聞く中でパークホテルの老朽化などの問題が浮き彫りになった。コロナ禍で宿泊業はとても厳しい状況にあったが、ホテルは公共性が非常に高い。砂川市を活性化するためには必要不可欠だと感じた。
―具体的な構想は。
老朽化が進むものの客室の8割は常に稼働している。時間をかけてコンセプトを考えているところで、営業を止めずに改築や改修など、お客さまが心地よく宿泊できる環境を整えたい。
(聞き手・室谷奈央)