【ノボシビルスクIDA】ロシアで工業団地が拡大している。ロシア工業団地協会によると、2013年に全国80カ所だった工場団地数は17年には166カ所に増えた。このうち国や州が所有するのは75カ所で、残りは民間だ。ロシアでは、民間企業が広い所有地を有効活用するために工業団地を造成する例が多い。
■ノボシは交通物流ハブ
ロシアの工業団地の歴史はまだ浅い。第1号が誕生したのは07年のカルーガ州だった。ロシア工業商務省・地域産業政策および事業管理局のデニス・ツカーノフ副局長は「ドイツ、フランスなどでは80年前にこうした区域が登場し、今では大規模化している。われわれは彼らのミスを繰り返さないよう、現地調査に赴いて経験をしっかり学んだ」と話す。
地域に着目すると、工業団地があるロシアの州は17年で51。これは13年に比べて6割多い数字だ。総従業員数は同2・2倍の12万5000人となっている。
全団地の3分の2は、何もない野原の状態からインフラを整備したエリアで、文字通り「グリーンフィールド」と呼ばれている。もう一種類は、以前に工場などがあった土地で道路や電気などの設備を再活用した団地を指し、こちらは「ブラウンフィールド」といわれる。
ここノボシビルスク州でも、複数の工業団地が稼働している。列挙すると、州工業物流団地、バイオ技術パーク、学術都市アカデムパーク、医療技術パーク、医療工業団地が公営団地だ。これに加えて2つの民間団地「ノボシブ」「エクラン」がある。民間は前述のブラウンフィールドに当たり、ソビエト連邦時代の工場跡をベースとしている。
本稿で紹介するのはノボシ州工業物流団地だ。州政府と州投資発展エージェンシーが主導して08年に造成した団地で、ロシア東部では最大規模を誇る。インフラ整備には40億㍔(70億円弱)が投じられた。
この工業団地の最大の特長は、地理的優位性である。ロシア全土につながる国道、またシベリア鉄道、国際空港に隣接しており、生産品をシベリア、極東、さらに中央アジア諸国の市場へスムーズに運ぶことができる。ノボシ州はユーラシアの中心にあり、交通物流ハブとしての地理的メリットを最も発揮できるわけだ。
もう一つの特長は、近代的なインフラを、数十年という長期にわたって入居企業に提供する点だ。インフラは団地の管理会社が所有しており、入居企業は早ければ手続き開始から2カ月程度で実際に利用することができる。さらに入居企業は、州投資発展エージェンシーからプロジェクトの支援を受けられる。
■米社工場が稼働 ノボシ工業物流団地、建設関係も
ノボシ州工業物流団地には現在21社が入居している。業種は物流、食品製造、機械製造、建材製造などさまざまだ。ロシア企業だけではなく米国「マース」社のペットフード工場が稼働している。また、やはり米国の食品メーカー「モンデリーズ」社の工場も建設中だ。外国企業がロシアの工業団地に入居するには、まず現地支店、または現地子会社を設立することが必須だ。この支店・子会社が団地の管理会社と入居契約を結ぶ。
建設関係のメーカーが、当団地で2社操業中だ。1つは外壁材の「シバリュクス」(SIBALUX)社で、ロシアのアルミ外壁材市場でシェア15%を占める有力企業だ。全土の大規模ビルで200棟以上に採用されているほか、中米ニカラグアのロシア大使館の建物、またロシア国立研究機関の半導体物理学研究所向けなど、さまざまな納入実績がある。同社のオリガ・クラスノシャプカ部長は、「当社は増産に合わせて既に団地内で2区画を借りており、今後の拡大も検討中」と語る。
2社目は、コンクリートの「アルマトン」(ARMATON)社だ。同社工場は欧州製の生産設備を導入し、さまざまな形状の鉄筋コンクリートパネルをはじめ、階段や換気ダクトといった資材、壁用の基礎ブロック、道路スラブ、中空コアスラブなどを製造している。アルマトンは、シベリアのトップ10に入る企業グループに属している。
当団地で働く従業員の総数は2000人を超える。入居企業の総投資額は計画ベースで550億㍔(約930億円)で、既に実績として290億㍔(約490億円)が投資されている。