「守る鉄路」地域と議論
鈴木直道知事が臨んだ初の定例道議会では、交通政策を巡ってさまざまな質問が飛び交った。JR北海道の路線見直し問題や道内空港の活性化といった課題にどう立ち向かうのか。知事の姿勢が問われる初めての機会となった。
懸案の鉄路存廃
2016年にJRが維持困難線区を示して以降、鉄路存廃は道政上の最も大きな懸案事項の一つだ。宗谷線など8線区を中心に協議が続く中、同社は4月の中期経営計画と長期経営ビジョンでも、維持に必要な地域負担額を示していない。道は19、20年度で緊急的・臨時的な支援を実施するが、その後の負担規模など不透明な点は多い。
持続的な鉄道網の構築に当たり、鈴木知事は交通体系全体を見据えた議論の必要性を強調した。道政執行方針演説に続き、代表質問でも「いかに道民の暮らしや物流を守るかという観点で公共交通全体を俯瞰(ふかん)していく」とした上で、道路や空港を含む交通体系の確立に取り組む意向を示した。
人流・物流の確保には鉄路に固執しない考えを示唆した形だが、議員の追及を受けて回答に窮する場面もあった。「必要な路線はしっかりと守り抜く」と述べた知事に、誰がどのように必要な路線を判断するのか議員が詰問すると答弁は中断。「地域と議論を尽くした上で、道と地域双方で結論を見いだす」と絞り出すのが精いっぱいだった。
8線区の支援を巡って大きな進展は見られなかった。鈴木知事は国の支援が21年度以降も継続するよう、支援の在り方について「国への提言を取りまとめ、時期を逸せず強く求めていく」と決意を表明。ただ、19年度は断念に追い込まれた地方財政措置の20年度要望などには触れなかった。
鈴木知事が夕張市長時代に申し入れた夕張支線の廃止は、「攻めの廃線」と評価を得た。その実績を掲げた知事に、今議会は広域自治体の長として担う職務の難しさを突き付けた。さまざまなステークホルダーが存在する中で協議を調整し、最適な解を導き出せるか。知事の真価が問われる。
空港運営移譲へ
本道の航空ネットワーク整備を巡っては3日に、道内7空港の一括民営化の優先交渉権者が決定した。北海道空港や道内企業を含む17者のグループが特別目的会社(SPC)を設立し、20年1月から運営移譲がスタートする。
本道の中核的なゲートウェイである新千歳空港は、旅客数の増加でターミナル整備が喫緊の課題となっている。議会で鈴木知事は、運営事業者による滑走路の維持補修や耐震性向上について「必要な予算が確保されるよう、空港の設置管理者である国に求める」と強調。民間委託後も道が果たすべき役割を明言した。
また鈴木知事は、外国人観光客のさらなる誘致に当たり、新千歳以外の6空港の活性化が重要だと指摘。いずれも赤字が続く6空港は、観光客の広域的な周遊を成功させることなどが収益確保の鍵を握る。知事はSPCと空港アクセス事業者との連携を図り、二次交通の強化に取り組むとした。
折しも会期中の9日、鈴木知事は新千歳空港の機能強化を国に要望し、16日には発着便数の拡大が決定した。今後も国に対する強い発信力を生かしつつ、二次交通を含めた地方空港整備や観光振興を図り、地域経済への確実な波及につなげることを期待する。