道民本位で国の制度活用
北海道の新たなけん引役となった鈴木知事。全国唯一の財政再生団体である夕張市の市長として、これまで果敢にチャレンジし続けてきた姿勢が有権者の心を捉え、選挙戦を制した。そして今、多くの道民は活性化に向けて鈴木知事がどんな政策を打ち、どう北海道を変えようとしているのかを見守っている。
具体的な政策は
鈴木知事の就任後初の定例道議会ということもあり、序盤の代表質問では知事の政治姿勢への質問が相次いだ。初日の道政執行方針演説で、鈴木知事は「ピンチをチャンスに変える道政」など3つの基本方針を掲げて「北海道・新時代の創造のため、全身全霊を尽くす」と決意を表した。これに対し、議員からはキャッチフレーズ的なものが多く具体的な政策が見えない、あるいはこれまでの政策の踏襲で新鮮味がないという指摘が何度もあった。
これら指摘に鈴木知事は「道民そして北海道の将来にとって何が大切かという視点に立って、道政運営に取り組む」と述べ、今後の道議会や地域、各分野との活発な議論から具現化する考えを示した。
また、中央とのパイプを持つ鈴木知事に対して、道民目線と言いながら総理官邸目線となるのではという懸念も。会期中には、総合政策部などの次長職に中央官僚を登用するなど副知事ら特別職に続いて、大胆な人事案が明るみになった。
国との関係について鈴木知事は「道民本位の立場で国の制度を十分に活用し、必要であれば具体的な政策提案を行うなど、北海道にとって最善の解決策を見いだす」と説明。国の言いなりにならないことを強調した。
ただ、本道では国との連携なしでは解決できない難題が多々あり、その点において鈴木知事の国への強い発信力を期待する声もある。これまでとは異なる国と道、そして市町村との関係をどう構築して、解決策を見いだすのか。今後もその手腕が注目される。
危機的な道財政
鈴木知事は知事選出馬を決意した当初から、道財政の危機的状況に警鐘を鳴らしていた。2定道議会前に公表した財政状況では、道債残高が2019年度に過去最高の5兆8900億円に膨れ上がり、一般財源に対する負債返済の比率を表す実質公債費比率は、26年度に早期健全化基準である25%近くの23.7%にまで上昇するという予想が示された。
道議会では、今後の財政運営に関する質問に対し、鈴木知事は「まずは令和2年度(20年度)まで現在の行財政運営方針に沿って改革にしっかりと取り組む」という考えを強調。その上で、ふるさと納税による資金確保をはじめ、民間の知恵や力の結集を目指す仕組みである『ほっかいどう応援団会議』の創設など、「行財政改革と政策の質の向上を合わせて推進し、新たな取り組みを着実に進め、北海道全体の活性化につなげる」と説いた。
このように、徹底した歳出抑制に努めた高橋はるみ前知事に対し、鈴木知事は攻めの姿勢も見せる。ただ、財政健全化について21年度以降の方針、目標について今議会で語られることはなかった。道財政が厳しい状況にある中であっても、道民や企業などが将来を見据えた取り組みが行えるよう、早急に今後の行財政改革の考え方を示すべきだと感じる。