【ウランバートル=AML】石炭暖房による冬の大気汚染に悩むモンゴルの首都ウランバートル市で、来年5月から石炭の使用が規制される。同市は中心部にマンションなどの高層ビルが立ち、その周辺をフェルトで覆った移動式住居(ゲル)、れんがや粘土で覆われた木造、ブロック積みの一軒家が密集するゲル集落が広がっている。大気汚染は主にゲル集落の石炭ストーブからもたらされ、市はゲル集落の拡大を抑え、政府は煙を抑える改良炭の生産で民間投資を促す対策に乗り出している。マンション建設やインフラ整備も推し進め、首都改造に取り組む考えだ。(Z・ボルギルマー)
■石炭使用を規制、マンション建設促進
モンゴルの首都ウランバートル市には全国民の約45%である138万人が住んでいる。首都定住者の52.8%に当たる60万人が地方出身の者であると、7月5日にAMLの取材に応じたウランバートル市副市長P・バヤルフー氏が明らかにした。同氏はインフラ整備担当だ。
P・バヤルフー氏は「地方から移住する人々にはマンションを買う資金がないため、ゲル集落が広がっている。最近まで首都在住者の約50%がマンションに住んでいた」と話している。ストーブをたいて暖を取る一軒家が密集するゲル集落に住んでいる世帯は2003年から急増。現在では市内全世帯の56.7%がゲル集落、43.3%がマンションに住んでいる。
ゲル集落に住む世帯数は21万になる。こうした世帯が冬に120万㌧の原炭を消費し、ウランバートル市の大気汚染源の8割は石炭によるという調査結果をP・バヤルフー氏が明らかにしている。
モンゴルの冬は150日も続き、過去の平均気温はマイナス16・7度からマイナス25・2度、最低気温はマイナス40度にもなる。
大気汚染の8割を発生させているゲル集落の原炭消費を減らすため、電気料金を下げるなどさまざまな取り組みをしてきた。しかし、昨年の冬は1万3000世帯しか電気ストーブを利用していないというデータもある。
07年から煙がない完全燃焼ストーブの導入、ゲルの断熱材の低価格販売、大気汚染管理向上など多面的な政策を、政府や首都の予算、外国企業や国際援助など合計で約250億トゥグルグ(約11億3700万円)を投下してきた。こうしたことから大気汚染が最も深刻だった11―12年に比べると改善されているが、まだ基準値を上回っている。
16年度のウランバートル市内の状況として、大気に含まれる二酸化炭素(CO)の量が基準値より5倍、ゲル集落では10倍にもなっている。ウランバートル市長S・バットボルド氏は16年に当選してから、地方からの首都移住を規制し、ゲル集落の拡大を阻止する条例を出した。また政府は年初に、19年5月19日以降に首都での原炭使用を規制する法案を提出している。
政府や市の方針では、原炭の代わりに、改良された石炭の使用を計画している。改良された石炭にすると、これまでゲル集落で1年間に消費する120万㌧が、60万㌧程度で済むと考えられている。
改良された石炭は原炭を改めて精炭にすることによって、熱量を上げ、石炭に含まれている大気汚染物質を75%以上も下げた石炭だ。この石炭を生産する起業家たちは、モンゴル改良炭協会を立ち上げている。政府はこの協会を支援している。
ベネ・プラスという技術を導入することで米国企業のエルピ・アミナがモンゴル政府と協力する契約を18年2月に結んだ。工場を建設して、18年度には2万㌧の改良炭を生産する予定だ。
副市長P・バヤルフー氏は、国営の第2火力発電所に併設している工場で年間30万㌧改良された石炭を製造し、残りの30万㌧を民間企業に供給してもらうと話している。また同氏は「改良された石炭の利用で、スモッグはなくなるわけではない。スモッグの量を減らすための一つの試みだ。世界の先進国は同じ道筋を歩んできた。将来的には首都でガスや省エネ暖房技術を供給するのが最も重要だ。また(湯を供給する)セントラル暖房のマンションを増やすことは大気汚染を減らす大きな効果がある」と話している。
市の方針では、首都でマンション建設、インフラ整備開発の第2案を計画しており、大気汚染を減らすには一般市民や民間企業の協力が必要だ。官民の協力で大気汚染を解消したいと、副市長は言っている。