積極的に企業からPRしエントリー促す
講師=前半・阿部大典氏(釧路公共職業安定所統括職業指導官)
■中途も売り手市場
道内の総人口は570万人をピークに右肩下がり。リクルートワークス研究所の中途採用実態調査では、必要な人員を確保できた割合が低下し続けている。4月のハローワーク釧路管内有効求人倍率は、全道平均を上回る1・28倍。道内でも倍率が高い。
求職者に選ばれるには、求人票の書き方に工夫が必要。詳しいことは面接の際に説明すればいい、求人票さえ出しておけば応募があると考えるのは間違い。
事務職でも、業種や規模によって担当する業務はさまざま。曖昧すぎると求職者は自分に向いている仕事なのかイメージできず、面接を受けようという意欲が湧かない。
■魅力ある求人票とは
まず採用ターゲットを絞って求職者の傾向を把握し、その層に届くような自社のアピール材料を並べる。求職者が抱く将来性や人間関係、労働条件、評価、キャリアアップなどの不安を解消しつつ、仕事内容の魅力をしっかり伝えること。
介護職募集なら「介護職全般」とだけ書くより、「入居高齢者の入浴介助や排せつなどの援助だけでなく、旅行や外食、趣味活動など生活の楽しみもサポートする仕事」とした方が興味を引く。資格取得費用全額補助、未経験者も歓迎などと加えるとハードルも下がる。
ただしうそは駄目。SNSで広まるとかえって悪いイメージが付く。そして求人が充足したらすぐ取り下げること。人が定着しない会社と思われる。
■就職率は学歴に反比例
学歴別就職率は実は高卒が最も高く、短大卒、大学の学部卒、修士、博士と進むにつれて低下する。採用は院生もターゲットにするべきだ。
全国では毎年7万人以上の大学生が進路未定のまま卒業している。採用漏れは人材の大きな損失だ。彼らは宝石の原石。企業が個性に沿って磨けばダイヤにもルビーにもなる。
■採用と定着へ戦略を
せっかく新卒を採用しても、道内では3年以内に34.6%、1年目に14.1%が辞めてしまう。受け入れ時の体制が重要になる。18歳人口はピークだった1992年の204万人から減少を続け、22年は92万人少ない112万人。24年に現在の89.8%まで減るとみられ、人材獲得競争はさらに激化していく。
企業はどこも優秀な学生を採用したがる。残念ながら優秀な卒業生ばかりとは言えないが、大学に入るくらいだから素質はあるはず。採用戦略を抜本的に見直し、全ての学生をターゲットとするほか、新入社員研修制度やキャリアアップ制度の見直しや可視化をして、定着率を上げる必要がある。
採用活動では学生のエントリーを待つのではなく大学のキャリア支援センターなどへ自ら獲得に行く、学生の自己PRで採否を決める前に企業からPRしてエントリーを促す―といった積極的な姿勢が求められる。