キャンパスの在り方、焦点に まちなか活性化期待
2025年に開設する仮称・地域創造デザイン学部を巡り、急浮上した中心市街地への分校舎設置案。空洞化する商店街の活性化を期待する声がある一方、学習環境の確保が困難という課題も挙がる。新学部のカリキュラム策定と合わせ、市は設置場所の検討を急いでいる。
かつては1000人もの学生・教職員を抱えた東海大の撤退は、地元経済界に衝撃を与えた。北海道中小企業家同友会のメンバーらが中心となり「ものづくり大学構想」を打ち出したのと同時期、旭大公立化の検討が本格化。2つの課題を同時に解決する方策として旭大にデザイン系学部新設が構想された。
学生を受け入れるため、旭大は現キャンパス内での校舎建設を模索。一方、5月には旭川平和通商店街振興組合など3商店街が市街地での新学部キャンパス設置を要望したことで、市街地への誘致が活発化している。
6月13日の定例市議会一般質問。市街地への新学部設置に関して今津寛介市長は「学生がまちなかにいるとさまざまな効果がある。時間の許す限り可能性を探りたい」と発言。市有施設を中心に市街地へのサテライトキャンパス設置を検討する考えを示した。
まちなかへのキャンパス誘致を要望した旭川平和通商店街振興組合の大西勝一理事長は「東海大があった頃は学生から市街地活性化のアイデアを提案してもらった」と述懐。その上で「日本初の歩行者天国である買物公園は、生活文化やまちづくりを学ぶ上で研究の良い材料。中心部に校舎があれば大学との交流が容易になる」と産学連携の可能性にも期待を寄せる。
一方、旭大側は永山の既存学部との連携に主眼を置く。藤原潤一学長は「新校舎設置となると、図書館や事務室など教育サービスを置かなくてはならない。持続可能性を考えれば現状の地域密着を維持した公立化が現実的では」と、永山キャンパス内での設置が費用や学習環境的にも優れている点を指摘した。
長く公立化に携わってきた旭大関係者は「(まちなかキャンパスの)ビジョン、プランが見えない。学生は時に静かに思索にふけることも必要だろう。どういう学生生活を送ってほしいのかが重要だ」と学生本位で分校舎の在り方を熟考する必要性を訴える。
新学部は大きく分けて「ものづくりデザイン学科」と「地域社会デザイン学科」で、授業内容によって加工・ICT設備が必要になる。市はカリキュラムの精査を急いでいて、年内には設置場所の結論も出したいとしている。
市街地中心部の買物公園は丸井今井と西武が撤退し、マルカツデパート、ファッションビルのオクノも閉店を予定するなど、商業の空洞化に歯止めがかからない。しかし、タワーマンションを中心とした再開発も多数計画され、大きく姿を変えつつある。
地域の担い手を育てるキャンパスの在り方は、まちづくりを左右する焦点になり得る。今津市長は、市が再開発の青写真を示す必要性を唱えるが、大学教育と地域活性化を両立させるビジョンを示せるか、決断が問われている。