日本万国博覧会(大阪万博)を象徴する建造物といわれて、多くの人がまず思い浮かべるのは芸術家岡本太郎がデザインした「太陽の塔」だろう。頂部に未来、腹部に現在と二つの顔を持つ素人にはどうにも理解し難い造形の巨大な塔だが、不思議と強く印象に残る
▼この塔がことし3月、耐震改修や内部再生を施されて復活。往時の姿を取り戻した。1970年の完成だから、50年近く風雨に耐えていることになる。取り壊しの話もこれまで何度となくあった。それを乗り越えられたのは塔を大阪の宝物と考え、支え続けた多くの人がいたからである。岡本氏の造った体ではあるが、今は大阪の血が流れているといってもいい。幸せな塔ではないか
▼それをことさら強く感じたのは、最近、不幸な塔の話題に触れたからである。それは開道100年のシンボルとして建てられた北海道百年記念塔。老朽化で危険なため道が解体の方針を決めたそうだ。70年完成だから、くしくも太陽の塔と同い年ということになる。平面で雪の結晶、立面で未来への発展を表現した意匠は地元の井口健さんのもの。野幌森林公園の一角にそびえる高さ100mの塔は遠くからでもよく見える。今は腐食が進み立ち入り禁止だが、かつて展望室から雄大な景色を眺めた人も少なくないはず
▼跡地には新しいモニュメントが設置されるとはいうものの、思い出の場所がなくなるのは寂しい。太陽の塔との差は一体どこにあったのか。ことし北海道命名150年。それなりに盛り上がってはいる。また一過性の祭りに終わらねばいいが。