住宅、エネルギーに興味
国立モンゴル科学技術大学を訪問
モンゴル滞在3日目の9月12日、国立モンゴル科学技術大学を訪問するという日本都市設計(本社・札幌)の武部幸紀社長とケイセイマサキ建設(同・新冠)の正木省司社長に同行した。2万7000人が通う同大に着き、建築学部長のゴンチャグバト氏を訪ねる。同学部では建築学科のほかにアーキテクチャー、建築エンジニア、環境などの学科があり、建築デザイン、公共施設、現代建築、土質工学、構造設計など多様に学ぶことができる。
ゴンチャグバト学部長によると、モンゴルの景気低迷を反映して「就職率はこの2年間で8割から6割まで落ち込んでいる」。国立研究所などにも入っているが、およそ6割の就職先が民間企業だと説明を受けた。ここ5年間では日本の大学院(修士課程)に12人進学しているが、このほかにも韓国、中国、ロシア、ハンガリーなどの欧州にも進学しているという。
武部社長はゴンチャグバト学部長に対して①若者の人材を求めにやってきた②寒冷地の住宅技術のアドバイスができる③日本的デザインになるがモンゴルの設計事務所と協働したい―という思いでモンゴルを訪ねてきたと説明。「卒業生で日本の建築設計を学びたい人を雇用したい。学び続けてそのまま会社に残ってくれてもいいし、帰国して学んだことを生かしてもらってもいい。昨年初めて訪れてみて優秀な学生がいると思った。ぜひ受け入れたい」と熱く語った。
さらに武部社長は積雪寒冷地の集合住宅での実績を示し「W造、RC造であればアドバイスは可能」とアピールした。これに対して来道したことがあるという学部長は「北海道、札幌の住宅とエネルギー事情に非常に興味を持っている」と話し、石炭暖房による大気汚染に悩むウランバートルの現状から北海道の暖房や大気汚染対策に強く興味を示した。
その上で「住宅やビルの寒冷地技術の研究で協力を得ることができれば」と話し、「武部さんの人材育成への気持ちは分かった。希望者を見つけるよう頑張りたい」と、武部社長の申し出に非常に前向きな姿勢を示した。
モンゴル政府は近代化が遅れているゲル地区の整備を進める意向と伝えられているが、特に冬の熱源、電気の供給不足、ばい煙対策が求められているという。これに対して武部社長は「私たちができるのは住宅の断熱だ」と外断熱でのアドバイスなどを伝えた。
ゲルは遊牧民の移動式住居だが、ウランバートル140万人のうち、遊牧民がウランバートル周辺に定住を求めてゲルを建て、住み着いたゲル地区と呼ばれる所に80万人が暮らしている。このためゲル集落でも「どういう材料、どういう工法を使えば省エネができるのか、あるいは効率のよいストーブを使えるのか。給水や電気の問題もあり」(ゴンチャグバト学部長)課題となっているという。
これに対して同行した正木社長は「私の来訪の目的はモンゴル人を招き入れたいということだ。優秀な若手技術者を受け入れたい」と話し、その背景には日本の人手不足という問題があることを説明。自社で既に15人のモンゴル人を受け入れ、そのうち国立モンゴル科学技術大学の卒業生が6人おり、責任者も生まれていることや、幹部として育てるために専門学校にも行かせていることなどもアピールした。
正木社長は、「日本人より多く給料を支払っている優秀な者がいる」とも語り、ゴンチャグバト学部長に対して寄付講座の開設を申し入れた。突然の申し入れに同学部長は慎重な姿勢で応じていたが後日、同社長の熱意に打たれ優秀な卒業生を送り込むことを伝えてきた。