市場分析で売場リモデル
東北地方最大の小売業者である大商集団が経営するニューマートの地下1階食品売り場と、麦凱楽(マイカル)の2カ所を訪れた。大連駅から近く、利便性が高い。ニューマートは低価格路線、マイカルは高級路線をとっている。かつて日本のマイカルが関わっていたことがある。
ニューマートの海鮮コーナーには、カエルやスッポンといった中国ならではの食材が並ぶ。日本のようにマグロなど刺し身の品ぞろえも充実。夕飯時の店内は多くの人でにぎわっていた。
オーストラリアの牧場を買い付け、オージービーフを販売。目立つ広告が設置され、販売に力を入れている様子がうかがえた。
マイカルの食品売り場は、買い物動線の中心にイートインを置いたり、店内を明るく仕上げるといった工夫を凝らす。経営する回転ずし店は20年前からある。1人120―130元(約2000円)と単価は高いが、常連が付くほどの人気ぶりだ。
集合レジではなく「島レジ」となっているため、顧客が必要以上の物を買わず、個人単価が低いことを課題として挙げる。化粧品のフロアでは、全30ブランドを展開。年間の売り上げは3億元(約46億円)にも上る。
大連マイカル総店の初川晃副総経理は「日本の百貨店はまず顧客のことを考える。中国はブランドから入る。これが大きな違い」と説明する。
売り上げ分析をすると、中心顧客である50代以上は洋服、若年層は化粧品を購入していることが分かった。何を購入したいかアンケートをした結果、最も多かったのは化粧品で80%。どの年代でも総じて70%以上の数値を記録した。
年代別で差が見られたのは洋服だ。20代には50%しか需要がなかった。意外にニーズが高いのは靴。そこで化粧品を購入しに来た客を誘導しようと、靴売り場の改装を日本のデザイン会社に依頼した。
化粧品を求める顧客を「美の追求者」と呼び、未来顧客に位置付ける。現状顧客層、子ども服を購入するファミリー層と、3つの層を軸にリモデルを進める方針だ。中国はこうした細かな市場分析をすることを苦手としていて、結果を伝えると、中国人トップが感心を寄せるという。
中国国内のネット通販利用率は、小売業全体の20%近くを占める。しかし、客単価が上がらず、頭打ち感が見られる。一方で消費者は、よりいいものを求めて百貨店に足を運ぶ動きも見せている。
2017年の1人当たりのGDP推移を見ると、上海の07年の水準に各都市が追い付いてきている。大連の平均賃金は、年間8万元(約120万円)ほど。北京や上海は年間12万元を超えるが、近年急激な成長を見せている。
初川副総経理は「上海などに比べ、人件費や土地代が安い。伸びてくる地域だと思うので、商機を見いだしたい」と意欲的だ。
(北海道建設新聞2019年11月14日付3面より)