花園、コロナ収束後見据え開発計画
投資家から最も高い関心を集めているのが倶知安町花園地区だ。アフターコロナを見据えた新たな大型開発計画が明らかになってきた。
町中心部から花園地区へ延びる町道岩尾別南3線沿い。パークハイアットニセコHANAZONOへ向かう途上に、香港系不動産開発のエーペックス・プロパティーが高級別荘地「ハナリッジ」の建設を進めている。敷地2・5㏊に整備する全12区画が、新型コロナウイルス感染拡大前に完売した。
同社は今、町道を挟んだ17㏊の敷地で68区画からなる高級別荘地「ハナクリーク」の開発を計画。宅地のほか商業施設を兼ね備えたクラブハウスを新築し、2025年末までに全区画を完成させる予定だ。
シルビア・タン代表取締役は、ひらふ地区と比べ発展途上の花園地区に大きな可能性を見ている。コロナ禍にあって「大きな区画を確保できるのは魅力的」とし、今後整備予定の北海道新幹線倶知安新駅や高速道路出入り口に近い利便性にも高い価値を感じているという。
地価の割安感も後押しする。町内の不動産業ダンシャクプロパティの佐川知也営業部マネージャーは「数年前なら、ひらふ中心部の20分の1ほどだった。パークハイアット建設後の今でも7分の1から5分の1程度だろう」と話す。
地区内では香港の不動産開発会社パシフィック・センチュリー・プレミアム・デベロップメンツがパークハイアット隣接地6㏊でホテルなど11棟を新築する「花園サウスビレッジ」計画に乗り出すほか、香港資本のスーパーオクサンも周辺の所有地6㏊で別荘約30棟を開発する方針。ニセコリアルティのミークル・クレイグ代表取締役は「複数の開発進行に伴い、数年後には資産価値の上昇が見込めるだろう。花園は有望な投資先だ」と指摘する。
ただ、花園地区の開発計画もコロナ禍と無縁ではない。香港の特定目的会社ロング・フォレスト・デベロップメント・リミテッドが構想する宿泊・商業施設は、今夏にも造成を開始予定だったが、インバウンドの落ち込みで規模や着工時期を見直し中。ハナクリークも、当初計画から数カ月の遅れが生じているという。
さらに、コロナ禍が改善した場合でも工事の進行に課題は残る。来春にも始まる複数の大型開発を控え、人手不足が特に懸念されている。
北海道新幹線や高速道路整備を背景に、後志管内は建設作業員らの人手不足が著しい。これに新規のリゾート開発だけでなく、20年に中断・延期した工事の再開が重なる可能性がある。開発に携わる建設業者は「労働力の調達が一層難しくなるのでは」と危機感を募らせる。
これまでリーマン・ショックや東日本大震災といった社会経済的な困難を幾度も克服し、国際リゾートとして発展してきたニセコ。「コロナ禍という史上類を見ない災厄も乗り越えた」-。数年後にそう評価され、さらなる飛躍を遂げるための正念場を迎えている。
(北海道建設新聞2020年12月24日付2面より)