建設業界を働きやすい職場に
働き方改革のロールモデルづくり事業は、建設産業が抱える課題も浮き彫りにした。
一つは長時間労働。公共工事の受注が主の場合、発注者が平準化を図っているものの、年度末に納期が集中する。また、地震や台風などの災害が発生すれば真っ先に駆け付け、24時間体制で対応に当たる。時期によって、労働時間が長くなることは避けられないという状況にある。
キャリアコンサルタントの藤塚優子氏は、若者に入職してもらうためには業務や職場環境を改善し、魅力的な業界になる必要があるとして「人材の確保・定着と業務改善は実はリンクしている。両方やっていかなければならない」とポイントを指摘する。
業務の改善には「今まで当たり前にやっていた業務に疑問を持ち、必要性、やり方を見直すことが大事」とし、「現状を把握し、業務にかかる時間などを数値化して、客観的に整理することが成功のこつ」とアドバイスする。
その上で「他業種で労働環境の改善が進む中、建設業界全体で、若年求職者が働きたいと思えるブランディングや職場環境づくりをする必要がある」と話す。
世代間で認識やコミュニケーションの在り方に違いがあるため、そのギャップを解消することも必要と続ける。
そして「まず宣言することも大事」と強調。長時間労働の是正などは企業単独では難しい場合がある。そこで、取り組みを対外的に打ち出すことで、周囲の協力や理解が得られるようになるという。
「建設業界は今、企業による差が激しい。取り組みを進めている企業には人が来るし、逆だと若い人は来なくなる。採用の面で見ても、やるメリットしかない」と藤塚氏。求人に反映すると、差別化をアピールできる利点もある。
業界のイメージを変えるには、1社だけの取り組みでは難しい。しかしそれが、他社が興味を持つきっかけになるなど、波及効果も期待できる。変わろうという意識を共有することができれば、建設業界自体が働きやすい職場になる。3社の半年間にわたる取り組みは、その道しるべになるだろう。
(北海道建設新聞2020年4月10日付14面より)